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<仙台いやすこ歩き>(43)コーヒー豆/厳選焙煎香りと味凝縮

 日本茶からハーブティーまでお茶類は何でも好きだが、あの琥珀(こはく)色は決まって1日数杯、口にする。「おいしいコーヒー豆のお店があるのよ。もちろん飲めるし」という画伯の誘いに、いそいそと付いてきたのは仙台市青葉区片平。広瀬川の川音が聞こえそうな東北大学かいわいを歩けば、鼻をくすぐる香りが手招きしてくる。
 「珈琲(コーヒー)まめ坊」は、中国の文豪・魯迅が仙台留学時代に滞在した下宿跡の隣にある。迎えてくれたのは、代表の青木まさ江さんの柔らかな笑顔と自然素材を使った心地よい空間。曲線を描く窓の外には竹林が広がり、その先に広瀬川と青葉山が程よく見え隠れする。
 店を開いたのは7年前。「それまでは勤め人だったんですよ」という青木さんは、根っからのコーヒー好きで、「おいしいコーヒーを家で飲みたい」に始まり、「自分で焙煎(ばいせん)したい」が、ついに「店を持ちたい」になったという。

 コーヒーは豆選びに始まる。国際基準によって徹底管理され、高評価を得た豆だけに与えられる「スペシャルティコーヒー」の称号。世界で生産されるコーヒー豆の5%しかないというこのスペシャルティコーヒーから、さらに厳選した生豆を仕入れているのだそうだ。
 焙煎室で生豆を見せていただいた。うぐいす色とでも言おうか、何か深い味わいを秘めた色。「こっちが深入りした豆」と手のひらに載せてくれたおなじみのコーヒー豆と並べると…。「わぁ、焙煎した方が大きい」と目を丸くする2人に、青木さんが丁寧に教えてくれた。
 「熱を加えると水分が飛び、繊維が膨らんで大きくなるんです。それと、中から油分も出るのでつやつやに」。なるほど、水分を飛ばすことで香りも味もぎゅっと凝縮されて、あの一杯ができるというわけなのか。
 焙煎室内には、いくつもの生豆の袋。さまざまな国の農園から船で日本へ、仙台へとやって来たのだと思うと、何だか恋しい気持ちにさせられる。きっと青木さんは、そんな気持ちの何十倍もの思いを持って、豆をいっているのだろう。

 「どんなコーヒーが好みですか」と聞かれ、「苦味があって酸味が少ない深入り」と答える画伯と、「全く同じ」という私に、青木さんはにっこり。「それと、好きな器を選んでください」と指さす棚には、九谷焼、有田焼、小鹿田(おんた)焼などのカップがずらり。
 選んだ器でいれたてを口に運べば、芳醇(ほうじゅん)な香り、深いコクに心が溶けていく。続いて「これは軽めです」と出してくださった季節のブレンド「涼(すずみ)」は、ふわっと鼻に抜ける豊かな香りと、爽やかな味。朝のコーヒー農園の風景が浮かんできそう。こんなにも味が違うなんて!
 青木さんは年間14、15種類をブレンドしているという。定番は、浅いりから順に「広瀬川」「まめ坊」「片平」。その名前からも地に根ざした思いが伝わってくる。産地への気持ちも熱く、「コーヒーの産地全てに行くのが夢かな」と話す。
 改めてコーヒーって奥深いと、琥珀色の液体に魅了された一日だった。

◎おぼえがき/日本の消費量は世界3位

 コーヒーの木はアカネ科コーヒー属の常緑樹。白い花を咲かせ、ジャスミンに似た芳香を漂わせる。花はやがて小さな実となり、完熟すると濃紅色となる。この果実の外皮をむくと果肉が現れ、その中にある薄い膜で覆われた種子が、コーヒーの生豆である。
 コーヒーの木は大変デリケートで、栽培は熱帯地方の標高1000〜2000メートルの高原地帯に限られる。
 原産はアフリカのエチオピア。人との関わりが始まったのは10世紀ごろといわれ、当時のアラビアでは乾燥させた種が非常に胃に良いと、民間薬として煎じて飲んでいた。
 焙煎という画期的な飲用法が編み出されたのは15世紀ごろと推測される。琥珀色の飲み物となったのはトルコで広まったトルココーヒーから。17世紀にヨーロッパに伝わり、日本への伝来は長崎の出島にオランダ人が持ち込んだのが最初である。
 現在の日本の消費量は世界第3位で、生豆はブラジルやベトナムをはじめ40カ国以上から輸入されている。



 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2016年09月26日月曜日


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