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被災し北海道移住 すし職人夫婦で再起

北海道新得町の食事会に出張し、すしを握る桑添さんと配膳係の野の子さん=18日

 東日本大震災で父親の店を継ぐ夢を失った仙台市出身のすし職人、桑添達也さん(44)と妻野の子さん(32)が、北海道・十勝地方で夫婦二人三脚の出張すし店「極楽寿司」を営んでいる。一度は職人の道を諦めたが、妻の地元、新得町への移住を機に「人を喜ばせたい」と再びすしを握り始めた。

<妻が配膳担当>
 「はい、お次、中トロね」。18日夜、新得町の小野瀬加栄子さん(64)が家族や友人と開いた食事会で、白衣姿の達也さんが腕を振るっていた。持ち込んだショーケースにマグロやサンマ、貝類など新鮮なネタを並べ、12人の客から次々に舞い込む注文に応える。着物姿の野の子さんは配膳担当だ。
 達也さんは、赤く色付けした酢飯や卵焼き、キュウリなどを組み合わせて模様を作る「飾りずし」と呼ばれる巻きずしも得意。客の前で巻いて見せ、包丁を入れた断面に色鮮やかな花や左右対称の模様が現れると「わあ」と歓声が上がった。
 達也さんは、東京都目黒区のすし店で15年間修業。地元に戻ってからは、父親が営む仙台市太白区の店とは別の店で働いた。「一人前になったら店を継ぐ」と心に決めていたが、東日本大震災が発生。父親の店は半壊し、再建を断念した。「積み上げてきた人生も、崩れてしまった気がした」

<口コミ広がる>
 2012年に給食会社に就職し、赴任先の札幌市で出会った野の子さんと結婚。昨年10月、会社を辞めて新得町に移住した際、野の子さんや家族にすし店の再開を勧められた。「すしのことになると、別人のように楽しそうに話すから」と、野の子さんはほほ笑む。
 当初は仕入れに苦労したが、町内の鮮魚店の協力で、帯広市の市場から新鮮な魚を入手できるようになった。出張先は人口の多い帯広市が主だが、口コミが広がり、近隣町村からの注文も徐々に増えた。「すしの仕事を続けられるのは、家族や地域の人が助けてくれたおかげ」と達也さん。
 十勝地方は今年8月に相次いだ台風で甚大な被害が出て、予約のキャンセルが相次いだ。「大震災の時、たくさんの人に助けてもらった。今度は自分のすしで地域を元気づけたい」。達也さんは10月、被災地域の住民にボランティアですしを配るつもりだ。


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2016年09月26日月曜日


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