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<までいな村の明日>泡と消えた「全域解除」

来年4月以降も避難指示が続く飯舘村長泥地区

 東京電力福島第1原発事故による避難指示が長泥地区を除き2017年3月末に解除される福島県飯舘村は、全域で避難指示が解かれる可能性もあった。

◎福島・飯舘村長選10月6日告示(下)分断

<区域見直し計画>
 村は14年秋、帰還困難区域に指定されていた村南部の長泥地区を居住制限区域に編入することを計画した。
 帰還困難区域は年間被ばく線量50ミリシーベルト以上が対象。長泥は当時、毎時4〜5マイクロシーベルトに自然減衰し、局所的なホットスポットを除けば、基準を下回っていた。
 帰還困難区域では、東電による慰謝料が1人700万円上乗せされる。その慰謝料を受ける一方、ほかの帰還困難区域と違って住民が比較的自由に立ち入りできる長泥地区特有の状況を、冷ややかに見る村民も少なくなかった。
 帰還困難から居住制限への区域見直しで除染に着手し、村内同時期の避難指示解除を目指すことが可能になる。村民間に生じた精神的「分断」も和らげられる−。村は国と協議をしながら再編を模索した。

<反対へ意識一変>
 年末まで2度あった長泥の住民懇談会で反対は大きくなかったが、年明けに一変。「住民に十分な説明がないまま国と調整していた」と不信感が広がり、計画は公表前に撤回された。
 背景には「再編で賠償金が減らされる」との根拠に乏しい不安があったともされるが、真相は不明だ。村幹部は「(同時に帰還できる)チャンスだったが…」と振り返る。
 政府は今年8月、帰還困難区域の取り扱いについて初めて方針を決定した。国が除染とインフラ整備を進める「復興拠点」を市町村ごとに設け、21年度をめどに避難指示解除を目指す。

<「ミニ拠点」提案>
 長泥地区は人口263の中山間地。「拠点」を設けるのが難しいため、村は集会所などを念頭にした「ミニ復興拠点」の整備を国に提案している。
 「毎年草刈りをして、古里を守ってきた思いを分かってほしい」「主要道路の国道399号を除染してもらえないか」
 9月4日、村内であった長泥地区の行政区臨時総会。拠点がないとして、国の除染が行われないことを危惧する声が村幹部にぶつけられた。
 総会では17年3月までに将来的な帰還の意思を含めた住民アンケートを取り、地区独自の再生計画もまとめることを申し合わせた。
 区長の鴫原良友さん(66)は「息子や孫の世代に判断を先送りにせず、少しでも長泥の将来が見えるようにしたい」と話す。
 原発事故で生じた分断を解消し、長泥地区を含め、復興の全体像をどう描くのか。手間暇を惜しまない生き方などを意味する「までい」。地域を支えてきた丁寧な作業が村の再生に欠かせない。
          ◇         ◇         ◇
 東京電力福島第1原発事故で全域が避難区域となった福島県飯舘村は2017年3月末、一部地区を除き避難指示が解除される。村は事故前、身近な自然を生かした手づくりの活性化策を模索し、「までいな村」として知られた。美しく、のどかな田園風景は戻るのか。10月6日告示の村長選(10月16日投開票)を前に、村再生の課題を探った。(福島総局・藤井宏匡)

【注】「までい」は、「丁寧に」「手間暇惜しまず」などを意味する方言。


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2016年09月29日木曜日


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