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<いじめ すくえぬ声>定義変遷 現場は困惑

 いじめ防止対策推進法は、いじめを「心理的、物理的な影響を与え、心身の苦痛を感じている」行為と定める。条文策定に関わった馳浩前文部科学相は大臣在職中の3月、河北新報社のインタビューに「(他害の意図がある)『攻撃』でなく『行為』と幅広く定義した」と説明した。

◎見落とし 重大事案化も

 何を「いじめ」と捉えるかは、重大ないじめ事案が起きるたびに変遷してきた(表)。国は続発する児童生徒の自殺を教訓に「狭義のいじめ」から「広義のいじめ」に解釈を変えてきた形だ。
 岩手県矢巾町の中2男子が15年7月、学校がいじめを人間関係のトラブルと捉え、解決済みと判断した末に自殺に至った問題が、さらに国の背中を押した。
 文科省は同年8月、「いじめの要件を限定的に解釈しない」「いじめの認知件数が多い学校を極めて肯定的に評価する」などの通知を全国の教育委員会に相次いで発出。集計中だった14年度の児童生徒の問題行動調査のうち、いじめについては各教委に再調査を求めた。
 今年3月に公表された確定調査結果では、東北6県のいじめ認知件数は前年度比で全国の増加数(2269件)を上回る3744件増の2万7213件に上った。特に福島県は前年度の3倍以上に増えた。
 いじめの定義の拡大と認知の強化によっていじめを幅広くすくい取れるようになった半面、いじめの多様な形態を認めることで「何がいじめに該当するか」は、より曖昧になった。逆説的とも言える状況に、学校現場には困惑が広がる。
 「法の定義に基づいていじめを認知することが『本当に適切か』との思いがある」「定義が広く、解釈が教員によって異なるのが実態だ」
 文科省が今年3〜6月、全国の教委のいじめ問題担当者や学校長、生徒指導主事らを抽出して実施した聞き取り調査では定義への違和感が続出した。認知に関しても「定義に該当するものを全て報告させると、生徒指導担当者の負担が膨大になる」「定義通りに認知し、膨大な数を報告することに意義があるのか疑問だ」などの声が相次いだ。
 「今一番に考えなければならないのは、明らかにいじめであるものを見落としている点だ」
 法の見直し作業を進めている文科省のいじめ防止対策協議会の委員の一人は6月末の会合で、いじめの定義と認知が重大事案の抑止につながっていない現状に警鐘を鳴らした。


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2016年09月29日木曜日


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