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<楽天 栗原健太引退>可能性信じ駆けた1年

イースタン・リーグヤクルト戦に出場した栗原。現役最後の試合となった=9月24日

 東北楽天の栗原健太内野手(34)=山形県天童市出身=が17年間のプロ生活にピリオドを打った。かつて主砲として低迷期を支えた広島は今季25年ぶりにセ・リーグ優勝。歓喜の日からほどなく、バットを置く決意をした。

<「この地で」胸に>
 歩み続けた道の行き着く先はどこなのか−。打席に向かう度に自問し、胸に刻んだ言葉がある。
 <この地で この地で 終わらせる意味を探し求め また歩き始める>
 登場曲として選んだサカナクションの「アルクアラウンド」の一節。球場で最後に流れたのは9月24日、イースタン・リーグのヤクルト戦(利府)になった。
 「4番・一塁」で先発し、セ・リーグでしのぎを削った館山昌平投手と向き合った。1打席目は10球粘った末に中飛、2打席目は三ゴロに倒れた。快音は響かなかったが「自分らしくフルスイングできた」。
 ベンチに戻りながら「今までありがとうございました」とつぶやき、球場に別れを告げた。この日のため、広島に残してきた娘たちを呼び寄せた。「プレーしている姿を目に焼き付けてもらいたかった」。スピーチも、胴上げもない「引退試合」だった。
 広島で出場機会を得られず、自らの可能性を信じて東北楽天へ来た。「練習の量、取り組む姿勢はカープでやってきたことを変えなかった」。泉練習場(仙台市)に午前6時台に一番乗り。春先に痛めた右脚の温浴やストレッチを入念にし、10時の練習開始に全力で動き出せるよう準備した。
 原体験になったのは2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。ロッカーが隣になったイチロー外野手に感銘を受けた。栄養ドリンクを飲む、スパイクを磨く、といった試合前のルーティンを分刻みでこなしていた。
 当時27歳の栗原が超一流選手に学んだように、東北楽天の若手は栗原に熱い視線を送った。新人の山田大樹内野手は「栗原さんのような強打者になりたいと思い、いろいろと質問した。技術的なことも心構えも教わった」と感謝する。

<恨み言口にせず>
 若手に負けじと体を追い込んだが、現実は甘くない。3度メスを入れた右肘は本来のパフォーマンスを出せなかった。けがを恨みながら現役を退く選手も少なくない中、「一生懸命やった結果。後悔していない」。戦友とも呼べる右腕に、責任を押し付けるような言い方はしたくなかった。
 「長い時間をかけて、理想の打撃をつくり上げても、数試合で投手に崩される。また積み上げる。その繰り返し」。野球道をこう表現した。報われるのは、試合を決める一打を放った一瞬だけ、とも話していた。
 生まれ変わっても、またプロ野球選手になりたいか尋ねた。
 「うーん…。どうですかね。それだけやり切ったから」と、やんわりと否定した。
 道は再び輝ける場所へとは続いていなかった。それでも、生まれ育った東北の地へやって来た意味は見つけた。(佐藤理史)


2016年10月04日火曜日


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