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<防潮堤>是非問う活動 住民の本意反映を

署名を集める大川さん=石巻市雄勝町

 東日本大震災で被災した石巻市雄勝町の防潮堤建設を巡り、是非を住民に問う活動が進められている。被災者が生活を立て直しつつある今、一人一人の本意を確かめるのが狙い。関係者は「反対運動ではなく、地域を次世代にどうつなぐのか、総意を形に残したい」と協力を呼び掛ける。
 雄勝町の11漁港で高さ2.4〜9.7メートルの防潮堤建設が計画され、既に一部は完成した。大半が震災前の高さを上回る。宮城県や市が住民らへの説明を経て工事を発注。建設予定地周辺の高台では防災集団移転団地などの造成が進む。
 活動するのは雄勝町の魚介類移動販売業大川砂由里(さゆり)さん(48)。今年5月以降、防潮堤建設に中立の立場で地域を回り、建設と見直しを求める2種類の請願書を配り、どちらかに署名してもらう。9月20日現在、約230人分を回収し、「見直し」は8割を占める。
 署名は震災後に古里を離れた住民にも依頼する方針。異なる立場を尊重するため、実施と見直し双方の署名を町民の意見として国などに提出する意向だ。
 大川さんは神奈川県鎌倉市出身。震災後にボランティアで雄勝町を訪れ、2013年から暮らす。美しい海と山、伝統工芸品の雄勝硯(すずり)、国指定重要無形民俗文化財の雄勝法印神楽といった多彩な魅力に引きつけられた。
 住民らと交流する中、防潮堤の実情に「住民の意思と懸け離れたところで建設が進むのではないか」と違和感を覚えたという。
 関係者によると、ある地区の会合では県の担当者が「防潮堤で命や産業を守りたい。工事を進めないと復興が遅れる」と説明。住民は「景観を壊してまで人が住まない低地を守る必要があるのか」と合意形成を求めたが、県側は着工の考えを告げて散会した。
 別の地区の住民は「本当は建設反対だが、早く高台の家へ移りたい住民の気持ちも分かる。建設が決まった以上、計画は覆らないだろうという諦めもある」と複雑な胸中を明かす。
 雄勝町は震災後に人口流出が続き、15年の国勢調査の人口は約1000で、10年の前回より約3000減った。
 大川さんは「復興は地域で暮らす人たちのためにある。その思いを少しでも計画に反映させる必要があるのではないか」と話す。
 署名活動に関する連絡先は大川さん090(5787)6875(平日のみ)。


2016年10月05日水曜日


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