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<タカマツ>奇跡呼んだクロススマッシュ

[高橋 礼華(たかはし・あやか=左=、日本ユニシス)]強打が武器。同種目の日本勢で14年スーパーシリーズ・ファイナル初制覇、16年全英オープンでは38年ぶりの優勝。宮城・聖ウルスラ学院英智高出。165センチ、60キロ。26歳。奈良県出身。[松友 美佐紀(まつとも・みさき=右=、日本ユニシス)]高橋と聖ウルスラ学院英智高時代からのペア。前衛のゲームメークが巧み。14年10月に現行世界ランキングで全種目を通じて日本勢初の1位。159センチ、50キロ。24歳。徳島県出身。
松友のクロススマッシュ。田所氏は「これぞ金メダルショット」と評した

 あと1点を失えば相手のマッチポイント。電光掲示板が無言の圧力をかける。ゲームカウント1−1で迎えた第3ゲーム、16−19。リオデジャネイロ五輪バドミントン女子決勝に臨んだ高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス、宮城・聖ウルスラ学院英智高出)は敗色濃厚になりながらも、ここから5ポイント連取で奇跡的な勝利を収めた。日本バドミントン界に初めてもたらされた金メダル。力と力、裏を読み合う駆け引きなどによる壮絶な「3分5秒の逆転劇」を振り返る。(剣持雄治)

◎金メダル3分5秒の逆転劇(上)

 個人や団体にかかわらず、球技も、格闘技も、ある一つのプレーがきっかけで試合の流れが変わる。今回の逆転劇について、複数の関係者が口をそろえて挙げた場面がある。
 第3ゲーム16−19から1点反撃して迎えた攻防だ。
 前衛高橋がやや右前方にサーブを落とし、2、3、4打目で自陣左後方へ高々と上がったロブショット…。ここで意外性のある一撃が飛び出す。松友が右クロスに豪快にスマッシュをたたき込んだ。
 本来、力強いスマッシュを持ち味にしながら広い守備範囲を誇る高橋が後衛、的確なカットと速攻でゲームメークする松友は前衛を務める。敵方にもその印象が強く刷り込まれている。正攻法と異なる陣形から、松友がジャンピング・スマッシュを繰り出した。
 高橋、松友の2人を高校時代に監督として指導した田所光男氏(現聖ウルスラ学院英智高総監督)は解説する。「松友が後ろからスマッシュを打つという点で、相手に相当なダメージを与えた。しかもノータッチ。向こうは屈辱だったろう」
 決めたのが高橋ならまだ諦めもつくが、まさか松友に−。デンマークペアの動揺は想像に難くない。
 タカマツはこれで一気に波に乗り3連続ポイント。勝負にケリをつけた。
 2人が所属する日本ユニシス監督の小宮山元氏も松友のあのスマッシュが試合を左右したとみる。松友の心理面を強調しながら、「大胆さを出せずにいた中、追い込まれながらも(まだ失点してもいいという余裕があり)開き直れたのだろう」と解説する。
 一方、田所氏は松友の負けん気に言及する。金メダルを獲得した翌日、松友は現地で観戦した田所氏の下を訪れ、こう言ったという。「あのまま負けたくなかった。相手に『あれ?』と思わせる球を打ちたかった」
 相手に頭をひねらせるプレーとは何だったのか。
 デンマークのペアは右利きと左利きの選手。「タカマツ」は第3ゲーム途中まで、2人のフォアハンドが内側になる時、狙うように間へ打ち込んだ。なぜなら、この場合、互いのラケットがぶつかるのを恐れ、「お見合い」をしがちになるからだ。
 そこで放った松友の一打。左利き選手が自陣から見て右サイドに来た時で、しかもシングルスラインぎりぎりにフォア側へ決めている。拾えなかった相手のショック度は計り知れない。
 小宮山氏は推測する。「松友がずっと見せていなかった球だろう。勝負にいき、最後は感覚的なものが働いたはずだ」
 これで松友はもちろん高橋も勢いづいた。
 一連の展開で見逃せないのは高橋のサーブだ。17−19から勝利に至るまで全て担ったのが高橋。相手の陣形を崩し、松友の動きを的確に引き出した。
 日本ユニシスコーチを務める平山優氏は、高橋の確実性の高いプレーを評価する。普段の練習姿勢に触れながら「意識を高く持って取り組んでいるから、ラリー一つにしても、とにかくミスがない。日ごろの積み重ねに尽きる」と語る。
 平山コーチは高橋の中学・高校の先輩でもあり、「ウルスラで鍛えられてきたからこそ、実業団に新人で入ってきた時には土台がしっかりしていた」と褒める。
 仙台でペアを組んで10年目。高橋と松友は時に力強く、時に柔軟に、まさに臨機応変に戦い、金メダルをつかんだ。

■決勝第3ゲーム 16−19からのスコアコメント
16−19 高橋のレシーブがネットにはじかれる
17−19 松友がネット際に落とす冷静なショットを決める。サーブ権が高橋へ
18−19 松友のクロススマッシュ。田所氏は「これぞ金メダルショット」と評した
19−19 前衛松友が本領発揮。軽快なフットワークを生かし追い付く
20−19 高橋、執念のレシーブから攻めに転じ、スマッシュ決める。マッチポイント
21−19 高橋のスマッシュを相手が返せず、試合終了。1時間21分の激闘を制する
(決勝は現地時間8月18日午後1時〜2時21分)


2016年10月05日水曜日


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