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グループホーム被災 地域共生考える契機に

昼食を取るグループホームの入所者ら。災害時の避難の方策に、各施設が腐心する=宮城県大和町の「けやき」

 災害弱者の認知症高齢者を抱えるグループホームの避難はどうあるべきか。台風10号豪雨で入所者9人が犠牲になった岩手県岩泉町のグループホームの被害を受けて東北の施設を取材し、対策の遅れと難しさを改めて感じた。住民と連携した避難態勢づくりも立地条件によっては簡単ではない。住民一人一人が施設の実情を知り、防災の観点から地域との共生を考える契機とすべきだ。

 「岩泉の被害は人ごとではない」。多賀城市のグループホーム管理者は危機感を募らせる。洪水ハザードマップの浸水予想区域に立地するが、「避難準備情報の段階で避難が必要との認識はなかった」と明かす。
 入所者の大半は自力歩行が困難で、避難には人手が不可欠。「地域との訓練を繰り返し、素早く協力を得る態勢を築かなければならない」と対応を急ぐ。
 グループホームは認知症高齢者の増加に伴い、近年急速に増えた。日常に近い形で暮らすことで症状の進行を抑えるのが狙いで、地域との共生を前提とする。
 高齢者施設の中で最も住民に身近な存在とされる半面、災害対策や地域との連携が進んでいるとは言い難い。
 実態はNPO法人宮城県認知症グループホーム協議会が9月、県内の会員140施設に実施した調査でも浮き彫りになった。回答した83施設のうち、風水害想定の避難マニュアルがあるのは6割。火災や他の災害を含めても、地域と連携して訓練に取り組む施設は7割にとどまった。
 早急な対策が必要だが課題も多い。東日本大震災の津波で被災した気仙沼市のグループホーム「村伝」は非常時、震災の記憶がフラッシュバックして入所者が混乱することを懸念する。
 村伝の管理者は「認知症高齢者は環境の変化に弱い。不安を軽減できるよう家族に早めに来てもらう態勢も検討中」と模索する。

 立地上、住民との連携が難しいケースもある。宮城県大和町のグループホーム「けやき」は吉田川まで100メートル程度。昨年9月の宮城豪雨では床上浸水した。
 周辺は民家が少ない上、高齢者が多い。「住民も早期避難が必要。危険な時は職員が多い日中のうちに避難を済ませるしかない」。避難準備情報が出ていなくても、隣接施設の2階に避難するなど先手の対応を重視する。「空振りでも命には替えられない」からだ。
 施設が災害対策に腐心する実情に地域はもっと関心を寄せてほしい。調査では地域との訓練を「案内しても参加してもらえない」と答えた施設もあった。
 施設は普段から住民と交流を図ろうと催しを開いたり、地域向けの掲示板を設けたりする。悲劇を繰り返さないためには、住民が施設側のアプローチを受け止め、近隣の災害弱者に目配りすることが欠かせない。
 記者の祖母も、グループホームで晩年を過ごした。地域に暮らす高齢者を災害からどう守るか。「わがこと」として考えたい。(報道部・菊池春子)

[認知症高齢者グループホーム]認知症のため介護が必要な人が少人数で共同生活する住居。職員が入浴や食事、日常生活の世話などに当たる。地域や家庭に近い形で生活を送るのが特徴。現在、全国で約1万3000施設、東北で約1300施設ある。地域住民の代表者らを交えた「運営推進会議」の設置などが義務付けられている。


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2016年10月10日月曜日


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