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<台風10号>遺族 楽ん楽ん運営法人に不信感

施設職員に見送られ、説明会会場を後にする遺族ら=9日、岩手県岩泉町

 台風10号豪雨による洪水に襲われ、岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」で亡くなった入居者9人の遺族らが、施設の運営法人に不信感を募らせている。法人が9日に町内で開いた遺族向け説明会では「被災時の詳しい説明がない」と不満が渦巻いた。9人が犠牲になってから18日で四十九日を迎える。遺族の中には家族を世話した施設に感謝の気持ちを抱く人もいて、複雑な感情が交錯する。(盛岡総局・斎藤雄一、宮古支局・高木大毅)
 「開催まで時間がかかった割に、知りたかった情報は聞けなかった」
 楽ん楽んで亡くなった八重樫チヤさん(95)の長男八重樫信幸さん(73)と妻の絢子さん(72)は、埼玉県の自宅から説明会に駆け付けた。何よりも知りたかった母親の最期は語られなかったという。
 施設を運営する同町の医療法人社団「緑川会」は被災から40日がたった9日、初めて遺族を招いた説明会を非公開で開いた。亡くなった9人のうち6人の家族ら約15人が参加した。
 被災当時、楽ん楽んにいた女性所長は入院中で欠席。法人の佐藤弘明常務理事(53)らが当日の状況を時系列に沿って報告した。出席者によると、これまでの報道の内容と大きな違いはなかった。
 信幸さんは「母が亡くなる直前の様子を所長の口から聞かなければ、納得できない。責めるつもりはなく、ただ真相が知りたいだけだ」と丁寧な説明を望む。
 説明会で法人側は遺族への補償のほか、楽ん楽んを取り壊した後に慰霊碑を設ける方針を示した。出席者によると、配布資料はなく、弁護士が準備した書面を読み上げて進んだ。
 説明会の開催が遅れたことについて、理事の一人は「職員たちの聞き取り調査に時間がかかった」と説明したという。絢子さんは「あまりに事務的で驚いた。誠意が感じられなかった」と振り返る。
 慰霊碑を巡っては遺族に相談はなく、法人の理事会が一周忌までに設けることを決めていた。おばの畑中ソメさん(82)を亡くした畑中善四郎さん(67)は「今は9人が命を落とした原因を分析して示し、遺族の理解を得る段階。慰霊碑の話は一方的だ」と話す。
 肉親の施設生活が充実していたことを振り返る遺族もいる。義母の中屋敷チエさん(85)を亡くした中屋敷明子さん(47)は「自分たちだけで介護するのは大変。本人も家族も笑顔で過ごせたのは施設のおかげ」と職員らに感謝する。
 ただ、法人の説明を聞いて「遺族に本気で向き合っていない」と感じた。「遺族の立場になれば、あのような姿勢にはならないはず」と複雑な胸中を明かす。
 被災後、法人側からの遺族に対する連絡はほとんどなかったという。母を亡くした60代女性は「まず遺族に謝りに来るべきだったのではないか。初めての連絡が説明会の案内では配慮に欠ける」と指摘する。
 遺族は法人に再度の説明会開催を申し入れた。佐藤常務理事は「ご遺族への謝罪の思いは永遠に変わらない。今後の対応は要望を聞いて考えていく」と話す。


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2016年10月17日月曜日


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