秋田のニュース

<介護の行方>企業自ら研修 人材発掘

介護福祉士(右端)の指導を受けながら、排せつ介助の仕方を学んだ研修

 国は、親をはじめ家族の介護で離職や転職を余儀なくされることのないよう「介護離職ゼロ」を目指している。対策として介護の担い手を増やすことが急務だが、介護士らの待遇改善は進んでいない。介護職に「3K」(汚い、きつい、給料が安い)のイメージがある中で、担い手をどう確保していくのか。少子高齢化が全国最速で進み、「日本の将来の縮図」とも言える秋田県の介護現場で現状と課題を探った。(秋田総局・今愛理香)

◎少子高齢日本一の秋田から(上)担い手育成

<「先進的」と注目>
 「絶対に体から手を離さないで。膝と肩を同時に動かして」
 秋田市大町2丁目の介護施設「きららアーバンパレス」で9月25日、介護職員初任者研修の講座「きらら医療福祉アカデミー」があった。高校生を含む受講生12人が、施設の介護職員の指導を受けて排せつ介助の仕方を学んだ。
 アカデミーは、アーバンパレスなどを経営する「きららホールディングス」(秋田市)が運営する。主に社会福祉協議会などが開く初任者研修講座を企業が独自に開設するのは全国的にも珍しく、「先進的な取り組み」(厚生労働省)として介護関係者の注目を集める。
 同社がアカデミーを始めたのは2014年7月。希望者が少なくて講座を開けない市や町の社協があることなどを知り、「介護士を目指す人自体が減っている。自分たちでも人材育成の場をつくらないといけない」(佐々木誠宏学院長)と危機感を抱いたからだった。

<休日開催が好評>
 秋田県内の介護福祉士の新規登録者数は、年々減少している。県社協によると、14年度は前年度比44人減の1191人。団塊の世代が75歳以上となる25年には、約2800人が不足すると見込まれている。
 同社は講座を毎週日曜に開催。平日にある社協の講座に参加できない、介護業界への就職を希望する高校生や転職を考える社会人ら幅広い層を取り込む。さらに、自前の施設での実習を盛り込んでおり、参加者からは「職員が直接指導してくれるのは分かりやすくて勉強になる」(高校3年女子)と好評だ。
 佐々木学院長は「受講者の学びの選択肢が広がり、より人材を増やすことにつながる」と、企業が初任者研修を開く意義を強調する。2年間で32人が修了し、ほぼ全員がきららグループの施設で働く。
 企業の参入により担い手育成の入り口が広がりつつある一方で、担い手の将来は不透明なままだ。自宅で部分的に介護サービスを利用する比較的要介護度が軽い「要介護1」「同2」の認定者を、国が介護保険サービスから切り離すことを検討しているからだ。
 「要介護度の軽い人を介護保険サービスから切り捨てれば、県内の半数近い施設が倒産するだろう」。アーバンパレスの現場統括者鎌田勝さん(30)は指摘する。県内は要介護者約5万5000人のうち、5割近い約2万6900人を要介護1と同2が占めており、そうした人たちを切り離せば、施設の経営を悪化させる恐れがあるからだ。
 「倒産が増えれば、せっかく育てた担い手が行き場を失う上に、『介護難民』が増える悪循環になりかねない」。鎌田さんは不安を募らせる。

[介護職員初任者研修]介護の仕事に就くための基礎、条件となる研修。座学と実技を計130時間学ぶ。秋田県内では市や町の社会福祉協議会を中心に約30の事業所が講座を開設。国家資格の介護福祉士を受験するには、研修終了後、現場での実務者研修が3年必要になる。


関連ページ: 秋田 社会

2016年10月19日水曜日


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