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<福島の医療機器産業>素材40種の加工対応

パイプの引き伸ばし作業に当たる従業員。製 造工程は手作業が大半を占める
多用な材質、形状の金属パイプ。数字はセンチ

 福島県で医療機器産業が花開いている。2014年の出荷額は1303億円で全国3位だ。県による補助や展示会開催を追い風に既存企業や町工場が参入し、自社製品の開発などにこぎ着けている。東京電力福島第1原発事故からの復興のけん引役へ。世界市場という大舞台で輝く生産現場の一部を取材した。(福島総局・高橋一樹)

◎舞台は世界(中)エスク(矢吹町)医療用金属パイプ

<精度に自信>
 田畑の中にある住宅地の角を曲がると、平屋の工場が数棟見える。一部は新しいものの、よくある町工場といった印象だ。
 金属パイプ製造のエスクは福島県南の矢吹町にある。従業員は29人。びっくりするような機械がそろっているわけでは決してない。
 なのに、手掛ける金属パイプはカテーテルをはじめとした最先端の医療器具向け。血管を広げる「ステント」用は国内唯一で、商売の相手は海外に広がる。
 「取引先の関係者が見学に来ると、必ず『本当にここで作っているの?』と聞いてくる。うちの強みは従業員一人一人の経験とノウハウだから」。高畠伸幸社長(57)は得意げだ。
 成型、引き伸ばしなど大半が手作業。肉質のムラや温度変化による伸縮を極力なくす。精度の高さには自信がある。

<転機7年前>
 高畠社長はブラウン管テレビの部品を扱う会社の製造部長だった。液晶テレビの時代を迎えて退社を決意。培ったパイプ製造の技術を武器に創業した。20世紀最後の年だった。
 高級外車のブレーキ関連をはじめ自動車部品などで実績を重ねた。さらなる転機は7年ほど前。「治療の目安となるマーカーとして体内で使う金属チューブを作ってほしい」。医療機器大手から依頼された。
 「高密度でエックス線に反応し、胃酸にも負けない素材が必要」。指定されたのは「タンタル」というレアメタル(希少金属)。使用経験はほとんどなかったが見事に開発してみせた。
 技術の高さは医療メーカーに知れ渡り、取引が拡大。年間売上高3億5000万円のほぼ半分を医療機器が占めるまでになった。
 加工できる金属の多さは群を抜く。同業他社の3、4種に対し、ステントに使う「ニッケルチタン」などを含め40種を超える。
 「どんな材料で試作を頼まれても必ず挑戦してきた」と高畠社長。体を傷付けない生体適合性が求められる医療機器分野は、あらゆる素材に対応できる会社にぴたりとはまった。

<妥協しない>
 医療機器開発費の3分の2を補助する県の制度も奏功。1キロ当たり17万円もするタンタルなど希少金属の購入にも充てられた。
 高畠社長は「世界の人口が増える限り、医療の需要はなくならない。だから、景気に左右されない」と断言する。
 東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島の企業として「世界を相手に闘っている気概を示したい」とも考えている。
 だからこそ「短い工期で作り上げ、かつ100%使えるような精度の高さを目指す」と妥協はしない。


関連ページ: 福島 経済

2016年10月19日水曜日


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