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<介護の行方>目標制度やる気高める

就寝準備の介助をする倉田さん=8月17日午後6時5分ごろ、秋田県大仙市

 国は、親をはじめ家族の介護で離職や転職を余儀なくされることのないよう「介護離職ゼロ」を目指している。対策として介護の担い手を増やすことが急務だが、介護士らの待遇改善は進んでいない。介護職に「3K」(汚い、きつい、給料が安い)のイメージがある中で、担い手をどう確保していくのか。少子高齢化が全国最速で進み、「日本の将来の縮図」とも言える秋田県の介護現場で現状と課題を探った。(秋田総局・今愛理香)

◎少子高齢日本一の秋田から(中)離職防止

 平日の夜、秋田県大仙市の介護老人保健施設「なごみのさと」。ナースコールが数分置きに鳴るたびに、介護士の倉田志津さん(32)が入所者の元に駆け付け、笑顔で対応した。

<「気が休まらぬ」>
 介護施設の夜勤は、主に20〜30代の若い介護士が担当する。なごみのさとの場合、2人で70人の世話をする。勤務は午後4時半から。遅番(午後6時半まで勤務)を加えた計3人で夕食後の着替え、排せつ介助をした後、翌日午前9時まで働く。仮眠や休憩の時間はあるものの、「気の休まる時はない」と倉田さんは言う。
 肉体的、精神的にきついこともあり、介護士は就職しても定着しにくい。秋田県社会福祉協議会によると、2013年度に退職した県内の介護職員(看護職員などを含む)1104人のうち、507人が勤務経験2年未満だった。
 辞める理由は激務だけではない。「忙しさから単純作業に陥りがちで、やりがいを見失ってしまう」。なごみのさとを運営する社会福祉法人あけぼの会の小原秀和理事は指摘する。
 そうした中、あけぼの会は職員にやりがいや目標を持たせる人事評価制度を導入し、若者らの退職者を減らすことに成功。人材確保に苦慮する県内の介護施設関係者の注目を集める。
 14年に始めた制度では、就職して半年程度の「新人」から地域交流イベントの企画ができる「課長級以上」まで職員のキャリアを5段階に分け、自分がどこを目指すのか、そのために何が必要かを明確にした。職員に目標達成へ向けた助言をしながら、筆記などの昇進試験を定期的に実施。意欲さえあれば、年齢を問わず昇進できるようにした。

<昇進試験 刺激に>
 その結果、なごみのさとの退職者は12年の9人から14年と15年は各7人、今年は2人(10月現在)に減少。小原理事は「制度は若手のやる気につながっただけでなく、皆が生き生きと働くようになった」と語る。
 倉田さんもその一人だ。「個人では一人前の介護士としての基準や目標を設定するのが難しい。でも、制度によって自分を客観視でき、足りない部分に気付くことができる」。昇進試験も「いい刺激になっている。知識や技術を高めていきたい」と前向きに捉える。
 県長寿社会課の担当者はあけぼの会の取り組みを「若者のやりがいを高めて離職を防止するのは先進的。他の手本となる」と評価する。県はこうした事業所をバックアップするため、来年度に「介護サービス事業所認証評価制度」=?=の運用を始める。
 あけぼの会の人事評価制度は、採用にも好影響を与えている。制度を知って求職した人を含め、この3年間で30人を雇用した。小原理事は「やる気を引き出すのが事業所の役目。質の高い介護士を確保するためには、就職後の人材育成を本気でやらないといけない」と強調する。

[介護サービス事業所認証評価制度]人材育成に積極的に取り組む介護事業所を都道府県が評価、認証する。事業所は都道府県の「お墨付き」をもらうことで求職者や利用者へのアピールになる。全国でも実施する自治体は増えており、東北では青森県が今年6月に運用を始めた。


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2016年10月20日木曜日


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