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<福島の医療機器産業>直径0.35mm鮮明画像

光ファイバーを束ねる作業に当たる従業員
直径0.35ミリの光ファイバーを内蔵した内視鏡

 福島県で医療機器産業が花開いている。2014年の出荷額は1303億円で全国3位だ。県による補助や展示会開催を追い風に既存企業や町工場が参入し、自社製品の開発などにこぎ着けている。東京電力福島第1原発事故からの復興のけん引役へ。世界市場という大舞台で輝く生産現場の一部を取材した。(福島総局・高橋一樹)

◎舞台は世界(下)住田光学ガラス田島工場(福島県南会津町)内視鏡用光ファイバー

<細さを追求>
 自然豊かな奥会津の地で、誘致企業はしなやかに変革を遂げてきた。
 住田光学ガラス(さいたま市)が1970年、現在の福島県南会津町に開設した主力の田島田部原工場。当時の工場長が合併前の田島町出身だった縁もあって進出した。
 カメラレンズの加工をメインにスタートしたが、スマートフォンの登場で縮小。光学ガラスを原料にした光ファイバー製造へと、徐々に転換してきた。
 昨年5月に完成した新工場は、最先端の内視鏡に利用できる新型製品の製造開発拠点となる。「まだ稼働は一部にとどまるが、いずれは量産できる体制がこれで整った」。高野和之工場長(65)は力を込める。
 新型製品は光ファイバーのうち画像を転送する「イメージガイド」の一つだ。直径わずか0.35ミリ。注射針にも内蔵できる極細のガラス線が、体内で捉えた1万画素という鮮明な映像を送り届ける。
 直径約1ミリのイメージガイドは現在の主力製品で、気管や泌尿器の内視鏡に使われている。より細さを追求した新型を利用すれば、腎結石の処置などにも道が開けるという。

<断線に注意>
 生産には細やかさが求められる。直径3センチのガラス管に直径0.28ミリの「素線」と呼ばれる糸状ガラスを詰める。1万画素なら1万本の素線が必要だ。
 その後、熱で溶かして引き伸ばし、さらに細くすると柔らかくなるが、断線があってはならない。
 当然、検査室での業務が重要になる。モニターにファイバーの断面を映し出し、断線がないことを確認する。「細くすればそれだけ折れやすくなる。折れれば画像に黒い点などが生じてしまう」。現場の従業員は細心の注意を払う。
 新型製品の販売実績はまだないに等しい。現在は存在を認知させるため、腎結石処置用のサンプルを医療機関に提供している。

<地域で雇用>
 奥会津に立地して半世紀近く。当初の数十人規模から270人以上に増えた従業員は、ほとんどが周辺を含む会津地方の出身者だ。
 「いずれは脳や血管の内側なども撮影できる光ファイバー製造を目指したい」と高野工場長。
 「より生命を左右しやすい分野へと製品開発が進めば、それだけリスクも大きくなる。だからこそ『医療機器を扱っている』という高い意識を社員と共有したい」とも語る。
 新工場は施設整備の3分の2を助成する福島県の補助制度を活用し完成した。手厚い支援を背景に拡大を続ける福島の医療機器産業。命を支える企業と従業員の挑戦が、東京電力福島第1原発事故で被災した地域の将来を照らしている。


関連ページ: 福島 経済

2016年10月20日木曜日


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