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<介護の行方>一緒に出勤 皆で見守る

風花さんを気に掛けながら、利用者の世話をする中島さん(中央)

 国は、親をはじめ家族の介護で離職や転職を余儀なくされることのないよう「介護離職ゼロ」を目指している。対策として介護の担い手を増やすことが急務だが、介護士らの待遇改善は進んでいない。介護職に「3K」(汚い、きつい、給料が安い)のイメージがある中で、担い手をどう確保していくのか。少子高齢化が全国最速で進み、「日本の将来の縮図」とも言える秋田県の介護現場で現状と課題を探った。(秋田総局・今愛理香)

◎少子高齢日本一の秋田から(下)子育て支援

<出産、育児で離職>
 介護士は他の職種に比べて離職率が高いとされる。激務で、しかも収入面は恵まれないことが多いからだ。最近はそれらに加え、出産や育児を理由に辞めたり、転職したりする人が増えている。
 公益社団法人社会福祉振興・試験センター(東京)の2015年度の調査によると、介護士から転職した理由は「(出産や子育てなど)家庭との両立が難しい」という回答が28.2%と最も多く、「仕事がきつい」(24.6%)、「給与が低い」(20.3%)を上回った。
 母親でもある介護士の多くが仕事と育児の両立を断念する中、秋田市新屋のデイサービス施設「ア・ラ・ヤ・でデイ!!」は04年の設立時から、子ども同伴で働けるようにしている。
 代表の花沢富見子さん(60)は「別の介護施設で働いていた時、出産を理由に退職する介護士を見て、辞めるのはもったいないと痛感した」と振り返り、「この12年、妊娠や子育てを理由に退職した人はいない」と手応えを語る。
 「『ア・ラ・ヤ・でデイ!!』のような介護施設は全国的にも珍しい」。地方の介護の人材不足と子育て支援を研究する東北福祉大教授で同大地域福祉研究室長の都築光一さん(61)=社会福祉学=は取り組みをそう説明する。

<悩みや不安共有>
 現在は3人の職員が4〜8歳の子どもを同伴している。施設の近くに住む介護士の中島優子さん(46)もその一人。長女の小学2年風花さん(7)を出産して半年間の育児休暇を取った後、3歳まで一緒に出勤した。
 風花さんが小学1年の時には学童保育を利用したものの、なじめなかったため、日中、家で一人となる休日や夏休みなど長期の休みに連れてきている。
 子どもたちは主に、施設の利用者が集うホール(126平方メートル)で過ごす。フローリングのホールには仕切りがなく、隣の職員室からも目が行き届くため、職員みんなで見守ることができる。「女性が多い介護業界だからこそ、『お互いさま』の意識で支え合える」と花沢さんは言う。
 職員は子育ての悩みや不安を共有する。中島さんは当初、子どもがそばにいることで仕事が手に付かないのではないかと心配だった。「でも、周りのフォローもあり、仕事、子育ての両方で精神的な余裕を持てるようになった」と話す。
 大手企業を中心に社内保育所の設置が増えつつある中、介護施設を運営する事業所は一般企業に比べて資金力がなく、単独で社内保育所を設けることは難しいのが実情だ。
 都築さんは「ア・ラ・ヤ・でデイ!!」の取り組みが他の介護施設にも広がることを期待する。「そうなれば、複数の施設が共同で社内保育所を持つことにつながる。行政は助成金など経済面も含めて積極的に支援すべきだ」と提言する。

[社内保育所]一般企業が主体となって社内外に設ける保育施設。幼い子どもがいる女性社員のニーズに応えるもので、大企業を中心に広がりを見せている。設置、運営費は事業規模によって異なるが、年平均数百万〜1000万円。施設の広さや利用する乳幼児定員数などの条件を満たすと国の助成金を受けられる。


関連ページ: 秋田 社会

2016年10月21日金曜日


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