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<いわき>復興は「自分事」同志増やす

古滝屋のスタッフと語り合う里見さん=いわき市湯本温泉

◎いわき湯本温泉のホテル経営・里見さん/被災地案内3000人超す

 「知って、感じて、考えて」。いわき市湯本温泉のホテル経営者、里見喜生さん(48)がこう呼び掛け、2011年以来、東京電力福島第1原発事故の被災地を案内するスタディーツアーの参加者が3000人を超えた。被災地の内外を隔てる風化は年々進むが、「何も終わらぬ現実を『自分事』と受け止め、伝えてくれる人を増やしたい」と仕事の傍ら被災地に通う。

 湯本温泉で1695(元禄8)年創業の古滝屋の16代目。ホテル、旅館の多くは原発事故後、原発や除染の現場作業員らの借り上げ宿舎となったが、里見さんは12年夏まで休館。NPO法人「ふよう土2100」を設立し、被災地の自宅を離れて避難先で孤立する障害児、家族の居場所づくりと運営に取り組んだ。
 スタディーツアーは古滝屋をマイクロバスで出発して北上し、住民が避難中の富岡町夜ノ森地区を目指す。雑草に覆われた無人の街で記録写真を撮り、線量計で放射線の数値の変化を確かめ、道中では昨年9月の避難指示解除後も人の姿がない楢葉町なども見る。

 始まりは原発事故直後の11年4月。支援物資を持参した遠来の友人らを、実情を見てもらおうと市内の津波被災地に案内し続けた。その中で「きちんとカンパを得て継続的な活動にすべきだ」と助言を受け、自らのNPOが主催するツアーとして一人3000円の参加費をもらって、障害児支援にも充てることにした。
 縁ができた支援者や交流サイトを通じてツアーを広め、参加者はこれまで沖縄など全国から3000人余り。ゼミ合宿など首都圏の大学生が7割を占める。
 「自分が出会った被災地の人たちの思いや現状を話し、『電気をつくってきた街も電気を消費する街も同じ日本です』『原発事故という歴史に立ち会っていることを体感し、終わらぬ現実を記録写真とともに伝えてほしい』と訴えている」

 参加が1人や2人でも歓迎し「その方が深く語り合える」。埼玉県から来た年配者は地元に帰ってツアーの体験を話し、町内会有志を引率して再び参加してくれた。「ニュースで分かったつもりでいたが、被災地を見て心の底から悲しい」と感想を語った人もいる。
 本業の古滝屋の宿泊客は現在も震災前の4割ほど。風化、風評の壁はまだ厚いが、「被災地の復興を『自分事』としてつながってくれる人を増やしていきたい」と里見さんは意気込む。(編集委員・寺島英弥)


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2016年10月23日日曜日


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