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<福井文彦没後40年>心深い人柄 曲に宿る

「福井さんの歌のすばらしさを知ってほしい」と語る戸田さん=仙台市青葉区
福井文彦は仙台市若林区荒町出身。管弦楽曲や合唱曲、子どもの歌、宮城県内の小中高校歌など230曲余りを作った。数々の作曲コンクールで1位を取り、1964年の東京オリンピックの歌「この日のために」もその一つ。演奏家としても戦前、東京高等音楽学院(現国立音楽大)ピアノ科在学中にテナー歌手藤原義江の伴奏者に抜てきされ、世界一周演奏旅行にも同行した。戦後は古里の音楽界に尽くす。

 仙台市出身の作曲家福井文彦(1909〜76年、河北文化賞受賞者)が亡くなって、今年で40年。「蔵王に寄す」など東北に根差した名曲を世に出し、優れた合唱指導者として戦後の宮城県の合唱文化を育てた。福井とゆかり深く、来月19日の定期演奏会で代表曲を取り上げる同市の混声合唱団「クール・リュミエール」の指揮者、戸田靖男さん(83)は「次代まで歌い継いでほしい」と願う。(編集委員 寺島英弥)

◎合唱団クール・リュミエール指揮者 戸田靖男さんに聞く

 戸田さんは「福井さんがいなければ仙台の合唱の歴史はなかった」と語る。
 福井は45年から仙台中央放送局(NHK仙台放送局)放送合唱団を指揮した後、草分けの合唱団「仙台グリーンウッドハーモニー」などを育て、東北大、宮城教育大でも地元の音楽の担い手たちを薫陶した。
 「決して表現で妥協しない厳しい人だった」と福井の指導を受けた東北大男声合唱団OBの戸田さん。練習で指揮を学びながら作曲も志し、53年に同大が学生歌を募集した際、自作「陸奥の青葉の都」が2位になった。福井の補作編曲、ピアノ伴奏でレコードに収められた。
 心の師との最後の思い出は痛ましい。58年から率いるクール・リュミエールの創立20周年だった76年、演奏会のための記念作品を福井に委嘱した。が、「指揮もするはずだった福井さんは本番の直前に急逝し、追悼の演奏会になった」。
 福井の没後40年の今年、戸田さんにとってもクール・リュミエールの定期演奏会が第50回を迎える。大きな節目が重なる舞台で、福井の大作「蔵王に寄す」と「動物園」を取り上げる。
 「蔵王に寄す」は山形県の詩人、故真壁仁の同名の詩に福井が感動し、作曲を願い出て実現した交声曲。合唱にテナー独唱、ピアノ、オルガン、打楽器が加わり、蔵王の優しさ、荒々しさを壮大に歌い上げる。
 「福井さんの曲は旋律を美しく歌い、展開が自然。芸術に厳しく人に温かく、心深い人柄がそのまま現れた曲」と戸田さんは語る。
 「動物園」も代表曲(芸術祭文部大臣賞)で、福井の急逝後のリュミエール演奏会でも歌われた。「もぐら」「チンパンジー」「カンガルー」「だちょう」の心情や親子の絆、故郷の幻影などを多彩な音楽で描き、「作曲者の愛情があふれる曲」だ。
 定期演奏会は11月19日午後2時、同市青葉区の東北大百周年記念会館川内萩ホールで。曲は他に、東日本大震災から5年に寄せるフォーレ「レクイエム」など。入場券1000円、ヤマハ、カワイのプレイガイドで。連絡先は大友さん022(256)5420。


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2016年10月25日火曜日


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