青森のニュース

<道しるべ探して>役割あれば遊び心爆発

トレードマークのタオルを巻いて組員と作業中の山本さん

 座して消滅を待つのか、それとも流れにあらがってもがくのか。地域社会に用意されている未来が、そんな単純な二者択一であってはならない。人と人のしなやかなつながりが今、第3の道を切り開く。

◎第5部つながり(上)まちぐ(る)み

 八戸市の中心商店街が、何か大変なことになっていた。
 「八戸は、美人が多いですが、なまってるらしいよ。」とプリントした自虐Tシャツを店頭販売。呉服店に、帯をほどかれて「あーれぇー」と叫ぶマネキンが登場したこともあった。
 街中に遊び心があふれ出す。
 仕掛けたのは「楽しそうな八戸にしよう」と2014年10月に活動を始めた市民集団「まちぐみ」だ。小学生から80代まで350人超の市民が参加する。
 空き店舗を改装したまちぐみの活動拠点では、「組長」を名乗るアーティスト山本耕一郎さん(47)と「組員」たちが次なる「企て」を練っていた。

 「グッズ開発部」「まかない部」「ミシン部」など15の部があり、組員はいずれかの部に所属する。必要なら自分で部を立ち上げる。
 一人一人がちょっとした空き時間を利用し、少しずつ力を出し合ってまちづくりに参加できる「場」と「機会」を設けた。こうして南部せんべいのパッケージをデザインしたり、南部菱(ひし)刺しのコースターや名刺入れを作ったり。
 「役割をクリアにすると、人は自分に何ができるかを考えるようになる。まちづくりも一緒だと思う」と山本さん。今年3月に加入したばかりの平井ゆかりさん(39)が「世代を超えて知り合える。ここは居心地がいいんです」と応じた。

 山本さんは仙台の中学、高校を出て、筑波大で芸術を学んだ。英国に渡って取り組んだ彫刻で、個展を常時開催する売れっ子作家に上り詰めたのもつかの間、閉鎖的な美術界に興味がうせた。
 帰国後は、アートの力で人と人、人とまちをつなぐユニークな芸術活動を全国各地で展開。10年6月に八戸の人たちから声が掛かり、ぶらりとまちにやって来た。
 寂れた商店街を取材して歩くうち、気付いたことがある。「これからは地方がいかに元気に生き残るかが大切」。「何かとても大切なことを感じさせてくれた八戸の役に立ちたい」と港町に根を張った。
 組員のユニホームにしているTシャツのロゴが、組長と組員の心意気を物語る。「まちぐ(る)み」。自分が楽しくて、みんなも喜ぶ。それがまちづくりの極意だ。


2016年10月30日日曜日


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