山形のニュース

<道しるべ探して>地域の困り事を仕事に

起業希望者に先輩がアドバイスするナリワイ実践道場=鶴岡市の勤労者会館

◎とうほく共創 第5部つながり(下)ナリワイ

 はつらつとした女性たちが山形県鶴岡市で、小さな「商い」を次々生み出している。
 放置された柿の木を手入れして柿の葉茶を、作る。間引いたリンゴやブドウをフラワーアレンジメントに、加工する。地域ライターは東奔西走、取材する。
 子育てや家事に追われながらも自分の中にある「好きなこと」「できること」「地域に役立つこと」の三角形。その真ん中に仕事をつくる「鶴岡ナリワイプロジェクト」だ。
 一つのナリワイで月3万円程度の収入を目指す。決して大きな利益は求めない。「雇われて働く」という就労スタイルを転換する、新しい暮らし方の提案でもある。
 「人任せから脱して自治の精神を回復したい。ナリワイはその手段」とプロジェクトリーダーの井東敬子さん(49)は強調する。

 井東さんは2011年4月、豊かな子育て環境を求めて東京から家族と鶴岡に移り住んだ。旅行会社や非政府組織(NGO)勤務、自然体験型環境教育の専門家という多彩な肩書を見込まれ、市の雇用対策関連事業を手伝うようになった。
 早速、「月3万円ビジネス」をテーマに講演会を開いた。子育て世代を中心に集まった女性100人を前に「さあ、起業しよう」と呼び掛けたが「一人じゃ、やれない」。参加者は尻込みするばかりだった。
 奥ゆかしさを尊ぶ鶴岡の気風「沈潜(ちんせん)の風(ふう)」。どうやら少し気負いすぎていたようだ。
 「それなら一人で100歩進むのではなく、100人で一緒に一歩を踏み出そう」。まずは仲間づくりからとプロジェクトは14年に始動。2年間で20〜50代の14人が起業にこぎ着けた。
 東京から昨年移住した松田和子さん(50)は、メークや着付けをナリワイにする。「プロジェクト参加者はみんな自立しているけど、それでいて昔の長屋みたい。井戸端会議をしながら助け合っている感じかな」

 プロジェクトでは「実践道場」と銘打った講座を定期開催し、起業希望者を支援している。本年度は男性3人を含む12人が参加し、事業計画の策定や広報の手段、会計のポイントを学んでいる。ナリワイを興した先輩がアドバイスもする。
 「仲間と一緒に地域の『困った』を解決していきたい」と井東さん。目指すのは、普通の人がちょっとだけ頑張ると、周りの幸福感がちょっと増えるようなまちだ。決して気負わない。


2016年11月01日火曜日


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