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<準備宿泊>浪江スタート 帰還へ課題探る

自社工場の前で話す朝田さん=1日、福島県浪江町

 東京電力福島第1原発事故に伴い全町避難する福島県浪江町で1日、帰還に向けた長期滞在が可能になる「準備宿泊」が始まった。町は来年3月の帰還開始目標に向け、国と避難指示解除に向けた課題を探る。
 宿泊できるのは、避難指示解除準備と居住制限の両区域で、対象は計5863世帯1万5394人(10月5日現在)。帰還困難区域の住民も知人宅や町が借り上げた「ホテルなみえ」に泊まり、自宅の片付けなどを進められる。
 南相馬市に避難する無職大平勝美さん(64)は東日本大震災後初めて、幾世橋地区の自宅に宿泊。「家はシロアリの被害がひどい。いずれは解体するかもしれないが、それまでは庭のある自宅でのんびり過ごしたい」と表情を緩めた。
 生活再建支援のため、町は宿泊登録者を対象に生活物資の購入費を3割補助する。10月末オープンの仮設商業施設の店舗をはじめ、町内の計19店で来年1月末まで利用可能で、町内事業者の再生にもつなげる。
 事業者も準備宿泊を歓迎する。4年前に事業を再開した朝田木材産業の朝田英洋社長(48)は権現堂地区の自宅に戻った。「避難先の福島市からは片道70キロで午前5時に起床していた。これからは歩いて5分で会社に行ける」と笑顔を見せた。
 ただ、宿泊登録は112世帯281人(10月31日現在)で町人口の2%にも届かない。町外で自宅を再建するなど帰還意欲は年々低下。宅地の除染はほぼ終わったが、農地は53%(9月末現在)で、放射線量への不安は根強い。
 自宅の修繕もこれからだ。町によると、昨年始まった荒廃家屋の解体を終えたのは申請約1600件のうち約600件にとどまる。町内の災害公営住宅への入居開始予定は来年夏になる。
 朝田木材産業の従業員13人も宿泊登録はしていない。会社で唯一登録した朝田社長は「厳しい状況は続くが、町の利便性が高まり、少しずつ人が戻ってきてほしい」と期待した。


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2016年11月02日水曜日


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