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<道しるべ探して>住民組織で多機能自治

速水雄一(はやみ・ゆういち)1946年、島根県雲南市生まれ。慶大卒。旧島根県加茂町長4期。合併に伴う雲南市長選で初当選して現在3期目。2015年2月から全国組織「小規模多機能自治推進ネットワーク会議」代表。

◎とうほく共創 第5部つながり/島根県雲南市長 速水雄一氏に聞く

 2004年に6町村の合併で雲南市が誕生するとき、課題に浮上したのが地域力の低下だった。当時既に空き家や独居、高齢世帯が多く、家庭力の低下がみられた。家庭力が下がると自治会力が落ち、自治会力が落ちると地域力が下がる。
 この状況を克服するために取り入れたのが「地域自主組織」だった。
 「地域運営組織」「地域自治組織」など呼び方は各地でさまざま。雲南市は「法に触れること以外は何をやってもいい」「活動内容は生活に関わること全て」、そして「決して行政の下請けにはならない」をモットーとした。
 自治会が世帯単位の加入なのに対し、自主組織は一人一人が加入する。選挙に例えれば、自治会は1世帯1票制で、自主組織は1人1票制。一人一人が参加意識を持ち、自分たちの地域をこうしたいと自由に言い合える組織を目指した。

 自主組織は現在、市内全域に30団体ある。おおむね小学校区単位で設置された公民館を「交流センター」に改組し、活動拠点とした。この「互いの顔が見える範囲」が、自分たちの地域は自分たちで良くする活動を展開する上で大事だ。
 公民館長は教育委員会の任命だったが、交流センターで働く自主組織の職員は地域住民が選び、雇用する。市は人件費を含む一括交付金を支給し、それ以外は自主組織が自ら稼ぐ。
 例えば鍋山地区は、市の水道検針業務を自ら積極的に引き受けた。委託料で収入を確保しつつ、地域の全世帯を検針しながらお年寄りの見守り活動を展開している。
 唯一の小売店が閉店した波多地区は、交流センターの一角でスーパーマーケットを始めた。コンビニエンスストアにも引けを取らない品ぞろえで、高齢者の買い物を支援する。自主組織の職員が店番なので、人件費はほぼかからない。

 平成の大合併で行政規模が大きくなり、周辺部が置き去りにされたり生活習慣や伝統が無視されたりする問題が各地で起きている。合併自治体は、こうした地域に対する愛着や誇りをなぎ倒すような事態を回避しなければならない。
 そのための方策の一つが、自主組織を中心とした地域運営であり、総称して「小規模多機能自治」と呼ぶ。人口減少、少子高齢化に直面するわが国にとって重要な概念だ。
 自主組織の主役は高齢者にならざるを得ないため、今後は後継者の育成が必要になる。先輩たちを見習って若い人たちが自立し、その背中を見て子どもたちが地域への愛着を育む。こうした連鎖が将来、人口の社会増につながると信じている。


2016年11月02日水曜日


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