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福島への教育旅行 原発事故前の5割

教育旅行を誘致するキャラバンで、校長(左)に福島の安全性などを訴える福島県観光物産交流協会の関係者=10月26日、新潟県新発田市

 東京電力福島第1原発事故後に激減した福島県への教育旅行の回復が遅れている。県は費用を補助したり他県の学校を直接訪問するなど誘致に懸命だが、十分な成果は出ていない。保護者の放射線に対する不安に加え、新たな旅行先の定着という壁が立ちはだかる。(福島総局・藤井宏匡)

<校長に再開直談判>
 新潟県新発田市の小学校の校長室。10月下旬、教育旅行を売り込むキャラバンで、福島県観光物産交流協会の関係者らが会津地方などへの旅行再開を訴えた。
 第1原発からの距離が分かる地図も広げた。協会は「会津までは約100キロ。仙台や栃木の那須塩原とほぼ同じ」などとして放射線の心配はないと説明。「再開を検討していただきたい」と丁寧に依頼した。
 福島県が今秋発表した2015年度の教育旅行延べ宿泊者は38万1446人。東日本大震災と原発事故で大きく落ち込んだ11年度(13万2445人)の約3倍に増えたが、10年度(67万3912人)との比較では56.6%にとどまる。
 一方、15年1〜12月の一般観光客の県内入り込み数は5031万3090人で10年(5717万9069人)の88.0%。統計手法は異なるものの、教育旅行の回復遅れが際立つ。
 県は「20年度に75万人」の目標を掲げ、さまざまな手を打つ。県観光物産交流協会などと連携したキャラバンの訪問先は、旅行会社などを含め年間1000カ所以上に及ぶ。
 新たに福島県を旅行先に選んだ学校にはバス1台につき5万円を補助。部活動やサークルなどの合宿向けに最大30万円を助成する制度も設けている。

<新たな旅行先定着>
 回復遅れの大きな理由の一つが新たな旅行先の定着だ。新発田市でのキャラバンで、現地の教頭は「行き先を戻す作業には大きな負担が伴う」と説明した。
 原発事故前に会津地方を訪れていた市内の小学校12校のうち11校が旅行先を変更。新潟県佐渡島にしたケースが多い。校長は「金山をはじめ、世界遺産登録を目指す遺産群がある。現段階で佐渡のマイナス点はない」と語った。
 原発事故の風評払拭(ふっしょく)だけでなく、積極的に福島を選んでもらう戦略も求められる。県は10月、東京や宮城など9都県の小中高校を対象にした意向調査を始めた。現場が教育旅行に求める要素や狙いを把握し、新たな訪問先や教育内容の提案につなげる方針。
 福島県内では原発事故後、環境回復や放射線に関する情報を発信する「環境創造センター」(三春町)などが整備された。こうした施設を「もっとPRすべきだ」といった声もある。
 県観光交流課は「他県と競争する中で、原発事故の弱みを強みに変えて差別化を図りたい」と説明。福島の教育旅行をけん引してきた会津地方の歴史やスキー頼みからの脱却を視野に入れ、検討を進める。


2016年11月04日金曜日


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