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<むすび塾>中小企業と津波防災探る

小規模企業が集積し、津波避難が課題になっている愛知県碧南市の衣浦港4号地

 防災・減災キャンペーン「いのちと地域を守る」に取り組む河北新報社は25日、中日新聞社(名古屋市)と共催し、愛知県碧南市で巡回ワークショップ「むすび塾」を開く。南海トラフ巨大地震で津波被災が想定される臨海工業地帯を会場に、東日本大震災の体験と教訓を伝え、中小零細企業の経営者や従業員と共に避難の在り方を考える。
 震度7の巨大地震により一帯に最大3.5メートルの津波が襲来すると想定。1階事務所や作業所しかない企業の従業員が、2階施設を持つ近くの卸売市場会社に避難する訓練に取り組む。
 震災で想定以上の津波に襲われながら、訓練通り高台に避難して従業員の命を守った仙台港の製造所の元所長や、東松島市の遺族らが語り部として参加し、訓練を基に企業防災などの課題を振り返り、同じような犠牲を繰り返さないための備えの方策を語り合う。
 前日の24日には、市民を対象に語り部が被災体験を伝える「東日本大震災を忘れない〜被災体験を聞く会」を碧南市内で開く。
 河北新報社は震災教訓の伝承と防災啓発報道の深化を目的に、2014年から地方紙連携によるむすび塾の展開を始めた。中日新聞社と共催する25日のむすび塾は第8弾になる。

◎南海トラフ警戒/従業員の避難対策急務

 中日新聞社(名古屋市)と共催で25日に開く「愛知むすび塾」は、地方紙連携の開催としては初めて企業防災がテーマになる。国内を代表する東海地区の臨海工業地帯は津波対策が急がれており、参加企業は「東日本大震災の教訓を実践的な防災意識の向上につなげたい」と期待している。
 開催地の碧南市は三河湾の西側最深部にあり、重要港湾の衣浦(きぬうら)港一帯にトヨタ自動車の工場、中部電力の火力発電所など大手を含む約150社の事業所が立地し、約1万3000人が勤務する。
 地盤高は3〜4メートル以上あり、南海トラフ巨大地震による3.5メートルの津波想定でも被害はさほど甚大にならないとされているが、液状化などの懸念もあり、犠牲回避に向けた従業員の避難対策が大きな課題だ。
 特に小規模企業は防災対応が遅れている。市は今年3月、企業間の連携が進む衣浦港4号地の港本町地区事業所協議会(37社)をモデルに避難マニュアルを作成し、対策を呼び掛け始めたばかり。実践的な取り組みはこれからになる。
 むすび塾には同協議会が参加し、マニュアルに基づく避難訓練を初めて模擬的に実施し、課題を探る。
 周囲5社の避難先に指定された衣浦総合卸売市場の社長で、同協議会副会長の倉田実さん(61)は「被災後の事業継続のためにも従業員の命を守ることが最も大切だ。初めての訓練で連携を確認し、震災被災者の体験と教訓に学び、実践につなげたい」と意気込む。
 一帯の防災策を検討する市商工課の加藤和彦係長は「企業、従業員同士が防災意識を高めるいい機会」と啓発効果に期待する。
 中日新聞社の寺本政司社会部長は「臨海工業地帯の津波防災は東海地区の大きな課題。震災被災地の新聞社と連携し、津波犠牲を繰り返さない誓いを共有する機会にしたい」と話す。


2016年11月06日日曜日


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