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<どうなる和牛市場>酪農家の取り組み増加

半沢農場でOPUをする金田獣医師。超音波診断装置で牛の卵巣を確認する

 畜舎の同じケージでホルスタインと和牛の子牛が一緒に飼育される。宮城県栗原市瀬峰で酪農や稲作を営む高橋博文さん(39)は2年前、和牛の受精卵をホルスタインに移植して出産させる「受精卵移植」で和牛の繁殖を始めた。

◎高騰続く子牛相場(2)普及する受精卵移植

 「搾乳するにはホルスタインを妊娠させなければいけない。ホルスタインの凍結精液で人工授精するか、和牛の受精卵を移植するか手法は主に二つ。ただ、生まれた子牛は和牛の方がはるかに高値で売れる」
 高橋さんは受精卵移植による繁殖のメリットをこう説明する。
 高橋さんの和牛去勢子牛(360キロ)は今年、97万円の高値を付けた。ホルスタインの雄(1カ月齢)なら10万円ほどにしかならない。受精卵移植は人工授精より経費はかかるが、利益は雲泥の差だ。
 近年、受精卵移植技術の向上に加え、子牛相場が高騰していることで、繁殖事業に乗り出す酪農家が増えている。
 「とりわけ酪農が盛んな丸森町や角田市など県南では盛んになっている」。受精卵の生産や移植などを手掛ける「ノースブル」(仙台市)取締役の獣医師金田義之さん(47)は話す。
 和牛は子牛のとき、ホルスタインに比べて小柄で体力がないので感染症にかかりやすい。餌の配合もホルスタインと異なるなど手間は掛かるが、飼養管理をしっかりすれば収入増につながる。
 200頭を搾乳する半沢農場(丸森町)では2007年、年間出荷ベース十数頭で受精卵移植による和牛繁殖を開始。現在は年間出荷80頭に拡大させた。
 さらに今年から超音波診断装置を使って和牛の卵子を採取する先進技術「経膣(けいちつ)採卵」(OPU)を導入し、事業化した。雌牛の性周期に関係なく、通常の4倍の頻度で卵子を採取できるので、受精卵の大量生産が可能になる。
 半沢善幸社長(47)は「卵子を取り出すドナー牛は現在12頭。1年半かけて40頭に増やす。本業はあくまで酪農だが、子牛不足解消に役立ちたい」と語る。
 みやぎ総合家畜市場(美里町)では07年、受精卵移植で生まれた和牛子牛を2カ月齢で売買する市場ができた。初年度の上場頭数133頭に対し、15年度は650頭で約5倍になった。
 全農県本部の担当者は「繁殖に取り組む酪農家は増えているので、上場する子牛は微増傾向が続くだろう。子牛不足を補うため、積極的に子牛を供給してほしい」と期待する。
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 和牛子牛(生後300日前後)の取引価格が高騰を続け、関係者を悩ませている。高齢化と東日本大震災の影響で廃業する繁殖農家が相次ぎ、子牛の供給頭数が減ったからだ。子牛を成体に育てる肥育農家からは「高すぎる」と悲鳴が上がる。宮城では来年9月「全国和牛能力共進会(全共)」が初めて開催される。宮城は肉用牛の飼養戸数が全国4位、頭数は7位の畜産県だけに、生産現場や食肉市場に不安が広がる。(若柳支局・横山寛)


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2016年11月07日月曜日


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