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<福島への教育旅行>県内校にもPR必要

新潟県新発田市教委を訪れ、福島県への教育旅行再開を働き掛ける観光関係者=10月26日

 福島県が東京電力福島第1原発事故で落ち込んだ県内への教育旅行の回復に懸命となっている。補助制度や安全性をPRする活動を首都圏などで展開するが、それだけで十分とは思えない。そもそも福島県内の学校による県内旅行の数が戻っていない。隣県の宮城からも事故前の5割程度に減ったままで、足元からの働き掛けこそ必要ではないだろうか。

 教育旅行を売り込むため、福島県が県観光物産交流協会などと連携して続けるキャラバン。新潟県内を回った10月下旬の活動に同行した。
 協会関係者らは小学校や教育委員会に足を運び、バス1台につき5万円を補助する制度や放射線に関する学習場所の安全性などを丁寧に説明した。
 福島県によると、2015年度の県内への教育旅行宿泊者は延べ約38万人で、事故前の09年度の53.7%にとどまる。宿泊者の居住県別の09年度比を見ると、新潟27.6%、千葉46.4%、東京46.6%などと落ち込みが目立つ。
 さらに見逃せない数字がある。東北6県では宮城からが09年度比で55.7%と最低。次いで福島が67.4%の低さだった。教育旅行先を県外に変更したままの地元校が依然としてある程度残っていることをもっと注視すべきだろう。
 驚くのはこうした状況に県が手を打っていないという事実だ。野外活動を支援する県教委の主催事業はあるが、教育旅行に対するバス代の補助やキャラバンの対象は全て県外。知事部局は県教委に地元校の旅行先に関する詳細な照会すらしていないという。
 県観光交流課は「県内校対象の調査はしていない。県内向けに支援策などの呼び水も用意していない」と説明する。「学校は教育委員会の所管。知事部局としてはなかなか踏み込めない」との声も耳にしたが、努力をしない言い訳に聞こえてならない。
 内堀雅雄知事は10月31日の定例記者会見で「事実を正確に伝えて(放射線などに関する)心配が要らないことや、教育旅行先としての魅力があることを発信しなくてはならない」と強調した。「(そのための)次の施策を考えたい」とも語ったが、最初に事実や魅力を周知すべきは県内校に対してではないか。
 教育旅行の同行取材では、キャラバンなど福島県の取り組みに対する受け止め方に、地域による温度差があることも知らされた。
 全国を回る関係者によると、「(再開を)前向きに考えたい」と理解を示す学校は多いが、事前に訪問予約を入れても担当者が不在だったり、「資料だけでいい」と言われたりするという。
 教育旅行の回復が難しくなっているばかりか、原発事故の風化が進んでいると感じられてならない。
 県内には原発事故の教訓を伝える施設があり、語り部の方々がいる。風化防止が求められる今こそ、県内旅行の価値を県内の学校から評価してもらうことが大切だと思う。
(福島総局・藤井宏匡)

[福島県への教育旅行] 原発事故前の宿泊者は延べ70万人程度で推移していたが、事故が起きた2011年度は13万2445人に激減した。回復傾向にあるが、15年度は38万1446人。全国の学校などに教育旅行を売り込むキャラバンは県などが実施し、14年は1293カ所、15年は1089カ所を回った。県は県内を教育旅行で訪れる県外校にはバス1台当たり最大3万円を、事故後初めて訪れる学校には最大5万円をそれぞれ補助する制度も設けている。


2016年11月07日月曜日


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