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<どうなる和牛市場>廃業視野の高齢農家も

肥育する和牛の世話をする鹿野さん。急激な子牛相場の高騰に頭を痛める

 水田が広がる宮城県登米市米山町は、稲わらを餌として牛に与え、排せつ物で作った堆肥を稲作の肥料に用いる「耕畜連携」が盛ん。そんな水田地帯で稲作と和牛肥育などを手掛ける鹿野耕史さん(55)は、90頭を飼育する中規模肥育農家だ。

◎高騰続く子牛相場(4)霧中の肥育経営

 鹿野さんは「良質な子牛が欲しいのだが、簡単に買える値段ではなくなった。(子牛の)需要と供給のバランスが崩れると、こんなにも値段が変わるのか」とため息をつく。
 みやぎ総合家畜市場(宮城県美里町)に上場された去勢子牛(生後300日前後)の10月平均税込み価格は90万8000円。血統、体格ともに優れると100万円を超える。
 肥育して枝肉として出荷するのは生後30カ月齢。20カ月間の肥育中に餌代など約50万円の経費がかかる。子牛価格に経費を足した値段で枝肉が売れないと、赤字になる。
 「現在出荷しているのは、子牛相場が70万円ぐらいのときに購入した牛。1頭の枝肉重量は530〜550キロで、肉質にもよるが130万円ぐらいで売れるので約10万円の利益になる」と鹿野さんは説明する。
 高騰した子牛は来年後半ごろに屠畜され、枝肉として出荷される。食肉業界では「これ以上、枝肉価格は上がらない」といわれている。枝肉相場が現在のままなら、平均的な子牛を買って肥育して出荷した場合、赤字になってしまう。
 「枝肉価格が横ばいでも、子牛価格が相応に下がっていれば肥育経営は維持できる。とりあえず金が回るからだ。だが、子牛相場が今のままだと肥育農家はお手上げだ」
 同市米山町で35頭を肥育する石崎〓一(しゅういち)さん(69)はこう不安視する。
 石崎さんは仙台牛枝肉共進会で3回チャンピオンに輝いたベテラン。子牛の価格高騰に加え、後継者がいないこともあり、廃業を見越して頭数を減らしている。牛の世話は体力的にもきつくなってきたという。
 複数の畜産関係者によると、子牛高を背景に廃業を視野に入れる高齢の肥育農家が増えている。動物を飼っているので休めない。重労働で汚物の臭いも気になるからと、後継者が現れない状態だという。
 宮城県北のある高齢肥育農家は「枝肉価格が高い今がやめどきだ。90万円の子牛を肥育しても利益なんて出るはずがない。首が回らなくなって周りに迷惑を掛ける前に、廃業した方がいい」と自嘲気味に話す。
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 和牛子牛(生後300日前後)の取引価格が高騰を続け、関係者を悩ませている。高齢化と東日本大震災の影響で廃業する繁殖農家が相次ぎ、子牛の供給頭数が減ったからだ。子牛を成体に育てる肥育農家からは「高すぎる」と悲鳴が上がる。宮城では来年9月「全国和牛能力共進会(全共)」が初めて開催される。宮城は肉用牛の飼養戸数が全国4位、頭数は7位の畜産県だけに、生産現場や食肉市場に不安が広がる。(若柳支局・横山寛)

(注)〓は王へんに秀


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2016年11月09日水曜日


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