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<被災マンション法>資金確保や実務の制度化を

被災して取り壊されたマンション跡地。売却手続きを担う被災者の負担の大きさが浮き彫りになった=仙台市宮城野区福室

 東日本大震災で被災し、公費解体された仙台市内のマンションの敷地売却を巡っては、改正被災マンション法の適用を目指したが、実現しなかったケースもあった。手持ち資金が乏しく専門家への依頼をためらい、所有者自らが進めた結果、手続きの有効性を巡る訴訟に発展した。関係者は被災者の負担を減らすため、資金確保、実務の進め方を制度化する必要性を訴える。
 「全国に散らばった避難先を人づてに探した。賃貸や空き部屋の所有者は海外にもいた。資金がなく活動はほぼ手弁当だった」。公費解体された宮城野区福室の被災マンション(189戸)の土地売却を担った男性(68)は振り返る。所有者でつくる任意団体の代表を務めた。
 解体決定時には管理組合法人は解散し、積立金など組合の資産は清算済みだった。所有者から協力金を集めたが費用面の不安は残り、専門家の助言を十分に受けられないまま手続きを進めざるを得なかった。
 法律の解釈で悪戦苦闘。手続きの進め方を巡って感情的な対立も生まれ、所有者間の合意形成は難航した。改正法適用を念頭に8割以上の同意を集めて敷地売却を決議したのは解体決定から約3年後の2014年4月だった。
 買い主は「決議成立」を受け、同意しない1法人に対し所有権の移転登記を求めて提訴したが、15年9月、手続きの不備を理由に決議無効の判決を受けた。
 その後、話し合いで全所有者の同意を得て敷地を売却できたが、男性は「公的機関が手続きをチェックする仕組みがあれば、決議無効にならずに済んだ」と悔やむ。
 改正被災マンション法について、日本マンション学会前東北支部長の小杉学・明海大准教授(集合住宅管理)は「決議後の手続きの規定がないことが最大の問題点」と指摘する。
 「マンション建て替え円滑化法」には自治体に耐震不足と認定された物件を対象に、敷地売却手続きの主体となる組合を認可する制度がある。
 小杉准教授は「円滑化法を参考にした手続きの明確化に加え、管理組合の残った財産を売却手続きの資金にしたり、公費で専門家の支援を受けられたりする制度が必要だ」と強調する。

[マンション建て替え円滑化法]老朽化したマンションの建て替えを促すため、2002年に制定。14年の改正で南海トラフ巨大地震や首都直下地震などに備え、耐震性不足の場合、建物と敷地の売却を全員の同意でなく、8割の賛成でできるようになった。開発業者ら買い受け人の計画に基づいて手続きが進む。


2016年11月13日日曜日


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