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<被災マンション法>要件緩和でも手続き煩雑

 災害で住めなくなった建物の処分を支援する被災マンション法は、東日本大震災後の改正で要件が緩和されたにもかかわらず、「手続きの煩雑さなど課題が多い」との指摘が専門家から出ている。仙台市では、所有者の8割以上の同意で済む決議範囲を広げた改正法を適用し敷地を売却した2棟が、決議から売却完了まで1年以上かかった。改正法適用が決まった熊本地震の被災地でも、同様の事態が繰り返される恐れがある。(報道部・村上俊)

<1年がかり>
 「決議まで何とかこぎ着けても、売却までにはまだまだ課題がある」。宮城県マンション管理士会の高橋悦子会長は嘆く。
 管理士会によると、仙台市内の分譲マンション約1400棟のうち約120棟が全壊と判定された。
 このうち改正法を適用した宮城野区幸町のマンション(141戸)は2013年12月、敷地の売却を決議したが、売り渡しは約1年後。若林区新寺のマンション(64戸)は14年8月に決議が成立したものの、売却は今年1月にずれ込んだ。
 長期に及んだのは、決議によって売却の手続きが全て整うわけではないからだ。2棟の手続きの流れは図の通り。
 所有者は建物解体後に「敷地共有者」となるが、売却先への所有権移転登記は所有者が各自済ませる必要がある。2棟とも築35年が過ぎ、権利関係は複雑。抵当権は所有者が不明の場合、抹消手続きを肩代わりしたり、何重にも設定されていたりして時間がかかった。所有者が亡くなり、相続されていないケースもあった。
 敷地は所有権を集約した一般社団法人が一括売却した。こうした手続きは法律に規定がなく、所有者が専門家の助言を受けて手探りで進めた。

<透明性腐心>
 手続きの透明性の確保にも腐心した。新寺のマンションは、売却先を公開入札で決めた。高橋会長は「不動産売買は利害関係が絡みやすい。不信感や疑念を招けば合意形成は難しくなる」と通常の不動産取引との違いを強調する。
 改正法に基づく敷地売却決議は、売却先と代金見込み額を事前に定めて諮る規定がある。そのため売却時期が未定のまま、買い主と交渉する難しさがある。買い主の事情で白紙に戻る可能性もあり、決議をしても実際の売却は不安定な要素をはらむ。
 幸町のマンションの敷地売却に携わった不動産コンサルタント土谷信也さん(59)は「理解がある買い主を見つけないと成り立たない制度。売る側の立場が弱すぎる」と指摘する。

<熊本も懸念>
 熊本地震は10月5日に改正法適用を受けた。法務省によると、熊本市内のマンション約850棟のうち全壊19棟、大規模半壊21棟など計482棟が被災した。
 NPO法人熊本県マンション管理組合連合会によると、5棟ほどが法適用を目指す。平江澄雄会長は「被災状況は多様で8割の同意さえ容易ではない。迅速に手続きを進めるには行政や関係機関の支援が欠かせない」と話す。

[被災マンション法]阪神大震災を契機に、住めなくなった被災建物の再建を支援するため1995年に制定。全所有者の同意ではなく、8割以上の賛成で可能にした。2013年6月の改正で、建物が経済的価値を全て失った「全部滅失」の再建や敷地売却、半分以上失った「大規模一部滅失」の建物と敷地の売却、解体と敷地売却、解体の各決議も緩和対象になった。同年7月に東日本大震災に適用された。


2016年11月13日日曜日


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