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<仙台いやすこ歩き>(46)学食/母の味ゆったり味わう

 色づく並木をゆけば、昔懐かしいフォークソングが鼻歌となって出てくる。学生街だ。「ここのナポリタンがおいしいのよ」と絶賛する画伯に連れられてやって来たのは、仙台市青葉区の東北大片平キャンパス。今回は、何と学食である。
 北門前のガラス張りのしゃれた建物がそれ。テラス付きの1階カフェテリア「さくらキッチン」を通り過ぎ、階段を上って2階の「レストラン萩」へ。迎えてくれたのは、東北大生協が運営する両店の店長山田彰吾さん(30)だ。
 「以前、片平キャンパスには北門食堂と公孫樹( いちょう )食堂という二つの学食があったんです。1994年に公孫樹食堂が廃止されて北門食堂だけになり、2011年8月、リニューアルして今の形に。今夏には5周年感謝祭をしました」
 片平キャンパスは本部や研究所が中心なので、利用するのは大学院生や大学職員が多いという。同じ建物内に外国人留学生などが入居する寮があり、寮生たちはここで朝食を取っているのだそうだ。
 「東北大という看板を背負っているので、安全安心は基本。学生さんたちの健康のために、栄養価のバランスがとれていて、しかもリーズナブルであることを心掛けています。そして、アットホームでありたいと思っています」と山田さん。レストラン萩では大学関係者のほか、ご近所の方など一般客も少なくないという。
 レストラン萩の人気メニューをお聞きした。モーニングは日替わり朝プレート、ランチはナポリタン(!)だそう。それではと、うわさのナポリタンをいただくことにした。
 待つ間、改めて店内を見渡す。木とガラスに囲まれた空間から窓越しに見えるのは、南側に北門とれんが造りの伝統薫る建物、東側には昔ながらの街路樹と教会の風景。吹き抜けになった店内には、1階のさくらキッチンから学生たちのざわめきも心地よく響く。1人でビールを飲みながら食事しているドイツ人らしき男性や、本を読む先生らしき人、ビジネスマンやOLも。普段と違う、ゆったりとした時間が流れている。

◎市民にも幅広く慕われる

 東北大片平キャンパス内の学食は、公孫樹食堂が取り壊されるまで2カ所にあった。
 古い方が南門近くにあった公孫樹食堂で、1943年の建設である。45年7月の仙台大空襲の際、片平丁地区の40%が焼失した中で残った帝国大学時代の建物の一つであり、94年に取り壊されるまで長年にわたってにぎわった。
 もう一つの北門食堂は53年に建設され、戦後の新制大学スタートとともに3〜4倍となった学生数にも対応した。こちらもリニューアルされるまで60年近い歴史を刻みながら、学生のみならず幅広い市民に慕われた学食である。
 ナポリタンは、イタリアのナポリから米国ニューヨークに移住した移民たちが、スパゲティをあえる際、トマトソースの代わりにケチャップを使ったことから生まれた。日本では昭和30年代に国産スパゲティが生産され、日本人の口に合った洋食ナポリタンが学校給食のメニューにも取り入れられて急速に全国に普及。家庭、喫茶店や学食などの定番メニューとなった。
 そこに、ナポリタン登場である。笑顔のスタッフが運んできた一皿は、その笑顔を映したような優しい味。「あぁ、この味この味。懐かしくておいしくて、時々食べに来たくなるのよね」「う〜ん、分かる〜」。そんな会話をしながら、たっぷりの量もペロリとおなかに納めたいやすこ2人の満足の顔。
 「うちは一流のシェフがいるわけではなく、主婦のスタッフさんたちがメニューを考え、食材選びから盛り付けまで工夫しているんですよ」と山田さん。イタリア料理、特にナポリの料理はママンの味といわれるが、ここのナポリタンの懐かしくって、ほっとする味は、そう、母の味なのだ。
 「片平キャンパスは市民の集う所でもあります。花見の時も芽吹きの時も、窓からの眺めは気持ちいいですよ」という山田さんの言葉に、冬もすてきに違いないと思う。心休まる風景と母の味を、またゆったりといただきに来るとしよう。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2016年11月14日月曜日


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