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<復興を生きる>踊りの道 追い求める

外国人との文化交流行事で日本舞踊を披露する沼崎さん=10月23日、福島市

 支えられ、支える側に回り、将来の目標がはっきり見えた。「日本の伝統芸能を世界に広めたい」。女子高校生は夢を追い掛ける道を選ぼうとしている。
 福島市の沼崎なな香(こ)さん(18)は舞台や稽古に明け暮れる。10月下旬は市内で長唄などを披露し、外国人に踊りを教えた。大好きだから、舞台に立つと自然に笑みがこぼれる。

◎3・11大震災/ボランティア団体「ふくしまバトン」代表 沼崎なな香さん=福島市


 ボランティア団体「ふくしまバトン」代表。市内の日本舞踊教室に通う幼稚園児−大学生の仲間約30人のまとめ役だ。東京電力福島第1原発事故の避難者が暮らす福島県内の仮設住宅などを訪問。8月には熊本地震の被災地で踊った。

 小学3年で日本舞踊を始めた。福島県内で行う恒例の夏合宿が楽しみだった。中学入学直前の原発事故で状況は一変。屋外活動は制限され、その年の夏合宿は中止になりかけた。
 支えてくれたのは岡山大のボランティア団体。インターネットで事情を知り、昨年まで5年間、現地の寺や小学校を合宿場所として無償で使わせてくれた。
 今度は支援にどう応えていくかが、大きな課題になった。
 「支えられてばかりでは駄目」。福島市には日常が戻ってきたが、県内には古里に戻れない人たちが大勢いる。「支える立場になろう」。仲間と団体を結成したのは2014年だった。
 支える側に回ると、地域に根付く伝統芸能が危機にあると痛感する。原発事故の被災地はより深刻だ。全町避難を続ける浪江町の「請戸の田植踊」を必死に覚え、踊り手として加わり、地元の団体を応援した。

 舞い込んできた被災地支援に感謝する海外公演にも挑んだ。
 昨年6月のハワイ公演では当初、なかなか力を発揮できなかった。「気持ちがばらばら。一つになろう」。涙の反省会後に臨んだ最終公演で、何かをつかんだ気がした。
 こうした経験が花開いたのは今年3月の英国公演。みんなの動きを確認する必要など全くなかった。
 「一つになっていると、体で分かった」。会心の舞。踊りの持つ力と今後の針路が見えた。
 現在は尚志高(福島県郡山市)の通信制3年生。「踊りに打ち込みたい」と昨年、福島高(福島市)から編入した。来年9月にはハワイの大学に留学し、語学力を身に付けるつもりだ。
 被災地などで受け継がれている日本の伝統芸能を海外に広めるため、「海外の価値観に触れ、感性も磨きたい」。輝く瞳に迷いはない。(福島総局・柴崎吉敬)


2016年11月15日火曜日


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