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<福島中間貯蔵>苦渋の地権者 思い複雑

着工前に訓示する伊藤忠彦環境副大臣。奥にあるのは福島第1原発の排気筒=15日、福島県双葉町郡山

 東京電力福島第1原発事故に伴い福島県内で発生した除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設(福島県大熊町、双葉町)の本体工事が15日、始まった。土地を提供した地権者は「もう割り切った」と話しながらも古里への思いは複雑だ。「苦渋の決断を無駄にしないでほしい」と国に訴える。
 「復興に必要な施設。走り始めたのを止めるわけにいかない」。着工区域の土地を売った男性は話す。
 環境省からは11月初め、自宅を取り壊すとの連絡があった。「納得してはいても寂しい。古里や家がなくなるのだから…。今でも帰れるなら帰りたい」
 双葉町からいわき市に避難する福田幸司さん(72)は今年6月、契約書に判を押した。「いよいよ着工かとは思うが、もう気持ちの整理はついている」
 迷い続けた。代々、住んできた町だ。妻、長男と話し合って「帰れる見込みがないなら」と吹っ切った。自宅の鍵を渡したときは「これで終わりか」と思った。「町には墓参りぐらいしか行かなくなる。いわきで生きていく」
 別の地権者は「着工が遅い」と感じている。原発事故から5年8カ月。「早く県内各地の除染土壌の袋を運び込み、子どもが安心して遊べる環境にしてほしい」と願うからだ。
 土地提供を決めるまで、深い葛藤があった。生まれた家と家族の歴史が消えてしまう。でも、除染廃棄物を受け入れられる場所はここしかない。最後は「今を生きている人間として、何を選択すべきか」を考えた。
 一部は売却せず、あえて地上権設定の賃貸借にした。「自分が生きた証し」を古里に残すためだ。
 原発事故で家族や近所がばらばらになり、じいちゃんやばあちゃんが見知らぬ土地で死んでいく。
 「協力したのは県や町の復興のため。本当に安全な施設を造り、不安を払拭(ふっしょく)しなければ、帰りたい人が帰れず、町の復興に逆行する。皆の努力が無駄になってしまう。国は責任の重さを肝に銘じてほしい」


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2016年11月16日水曜日


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