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<岸楽天入り>被災地を忘れることはなかった

東北楽天に移籍することになった西武・岸選手=2015年9月、楽天Koboスタジアム宮城

 「仙台に帰りたかった。東日本大震災からの復興を後押ししたい気持ちがずっとあった」。西武からフリーエージェント(FA)宣言選手となった岸孝之投手(31)=東北学院大出=が17日までに、プロ野球東北楽天入りを決意した。移籍の決め手は、震災復興に向かう古里への愛着と、プロ入り時に誘ってくれた東北楽天に対する10年越しの思いが消えることはなかったからだ。
 2011年3月11日。岸選手の脳裏に、生まれ育った仙台、母校・名取北高時代に見慣れた名取の風景がよみがえった。失ったものの大きさをただただ感じた。
 11年シーズンの途中、くしくも大学時代にバッテリーを組んだ星孝典捕手(当時、現西武2軍コーチ)が巨人から西武へトレードで移籍してきた。2年先輩の星選手は名取市北釜の実家が被災し、祖父母や叔父夫婦が津波にのまれたという。
 震災の悲惨さをより身近に感じた。テレビや新聞を見れば東北楽天の選手たちが被災地を訪れていた。「楽天でもない俺が行って一体何をしたらいいのか」。自問自答を繰り返す中、古里への思いは強くなるばかりだった。
 だから11日に東北楽天と移籍交渉をした際、立花陽三球団社長、星野仙一副会長と思わず被災地の様子について語り合った。
 東北楽天入りを決断した背景には同球団への特別な思いもある。06年秋の大学生・社会人ドラフトで、本人の自由意思で球団選択ができる希望枠で西武に入ったが、前年にプロ野球に参入した東北楽天が熱心に誘ってくれた恩義は今なお忘れない。
 「星先輩を見に来た試合で、自分が無名だった大学2年時に見いだしてくれた」西武スカウトへの義理は、プロ生活10年で積み上げた通算103勝で少しは果たしたかもしれない。
 西武との3年契約は今シーズンが期限で、年齢的にも今オフこそFA権で移籍するタイミングだった。10年の歳月を経て東北楽天から再度のラブコール。「うれしかった。話があれば行くと決めていた」。別球団から獲得申し入れの打診があっても、交渉そのものを断った。
 来季は32歳で迎える。「東北のファンに自分は勝利を届けることしかできない。まだ(緩急を使った)本来の投球はできる」という自負がある。一度は擦れ違ってついえた岸選手と東北楽天の縁がようやく結ばれた。(スポーツ部・金野正之)


2016年11月18日金曜日


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