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<再生に挑む>オール福島復活期す

一つずつ手作業でできる生キャラメル。芳醇(ほうじゅん)な味わいが魅力だ

◎向山製作所(福島県大玉村)生キャラメル、パリで高評価

 「只今(ただいま)、販売を休止しております」
 ビター、黒ごま、抹茶など多様な味の生キャラメルを紹介する向山製作所(福島県大玉村)のホームページ。一番上の「プレーン」の紹介欄に、販売休止を告げる赤い文字が加えられてから5年以上が過ぎた。

<今もめど立たず>
 原料を全て福島県産にした看板商品だった。東京電力福島第1原発事故後、県内で唯一生クリームを製造していた乳業メーカーが生産を停止したのに伴い、販売を取りやめた。
 県外から調達した原料で生産を再開した製品は売り上げが伸びる中、県産生クリーム調達のめどは今も立たない。「オール福島産でまた販売したい」と織田金也社長(51)。商品リストから外さないのは意地と誇りの表れだ。
 電子部品の製造、加工会社として1990年に創業。下請け型の経営から脱するにはオリジナルの自社製品が必要と考え、2008年、生キャラメル作りに着手した。翌年、プレーンなど6種類を商品化した。
 郡山市の直営店や首都圏の老舗百貨店などで販売すると、「電子部品会社が作るおいしいスイーツ」との評判が広がった。11年3月には航空会社の国際線ファーストクラスの機内食に採用された。
 その直後、東日本大震災と原発事故が起きた。工場の被害は小さく、同4月に生産を再開したが、県産の生クリームは手に入らずプレーンの生産は断念。全国から仕入れた生クリームで試作を重ね、他の味のキャラメルで勝負した。
 翌5月、東京、仙台市など全国の催事で販売を再開すると、風評の嵐が待ち構えていた。「なぜ福島だと言ってくれないの。試食しちゃったじゃない」。主催者側は客に配慮し、放射線量検査の証明書を提示するよう求めてきた。

<仙台に7店舗目>
 「情けない」との思いとともに、織田社長の闘志に火が付いた。「風評と関係ない場所で勝負する」。被災地を訪れたフランスのパティシエと知り合ったのをきっかけに、12年、パリの世界的なチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ パリ」への出展を実現した。
 優しい甘さと繊細な口溶けが、本場ヨーロッパの人々を驚かせた。「どこで買えるのか」と尋ねる外国の人たちに、織田社長は自信を持って言った。「福島に食べに来てください」
 4年連続でパリ出展を果たし、品質の良さが国内でも認められる。13年以降、郡山、福島両市に直営の販売店を続々とオープン。今年3月、仙台市青葉区のエスパル仙台東館に7店舗目を出した。18年には本社工場近くに菓子専門工場を設立する計画だ。
 「食を通じてみんなが行きたいと思える福島にしたい。それが震災を生き残った僕たちの責任だ」と織田社長。福島の再生とプレーンの生キャラメルが店頭に並ぶ日が来ることを願う。(報道部・江川史織)


2016年11月18日金曜日


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