岩手のニュース

<仮設住宅>被災者の生活圏縮小に注意を

仮設住宅入居者の生活行動などをまとめた書籍
岩船昌起さん

 鹿児島大特任教授(健康地理学)の岩船昌起さん(48)が、東日本大震災に伴う仮設住宅の課題を、入居者の体力や行動範囲などから考察した「被災者支援のくらしづくり・まちづくり−仮設住宅で健康に生きる−」を出版した。被災した出身地・宮古市での現地調査を基に、生活圏の縮小や体力低下のリスクを指摘。健康に配慮した生活環境づくりの必要性などを提言している。
 調査は2012〜14年、宮古市の9仮設団地で、30〜80代の入居者延べ約100人を対象に実施した。体力計測や聞き取りの結果を中心に、住民の健康や行動範囲、移動手段などについて8章構成でまとめた。
 体力面では、調査時点で住民の身体活動量が一般的な日本人の平均と大差がなかった一方、行動範囲など「生活の広がり」は震災前の7割程度に低下。買い物や通院など外出時の移動手段は1キロ以内が徒歩、それ以上は車やバスなどを選択する特徴を確認した。
 被災前の居住地や市街地との距離によって、行動範囲が決まる傾向も指摘。活動レベルの低下は高齢者らを孤立させ、さまざまな疾患のリスクとなることから「仮設住宅から最大1キロ以内に、商店や花壇など、興味を引く何かを多様に存在させることがポイントになる」と提言した。
 岩船さんは「被災者の健康を守るには、仮設団地の地理的条件や個人の行動空間に着目した支援が不可欠だ」と指摘。仮設住宅の教訓を今後、「災害公営住宅の生活環境づくりに生かすと同時に、他地域での災害の復旧期に応用してほしい」と強調している。
 A5判118ページ。3024円。連絡先は古今書院03(3291)2757。


2016年11月24日木曜日


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