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<道しるべ探して>有志が運転 地域を維持

迎えに来たワゴン車に乗り込む金井さん(右)=青森県佐井村福浦

◎とうほく共創 第6部支え合い(中)住民の足

 いつも通り、迎えのワゴン車が来た。青森県佐井村福浦地区で元漁師の金井正之さん(78)を乗せ、80キロ先のむつ市へ向かう。
 佐井村は8年前、無医村になった。足と目を患う金井さんは月2回、往復3時間をかけて総合病院に通わなければならない。
 南北30キロの海岸線に集落が点在する村で、路線バスは北部地区にしか立ち寄らない。タクシー会社も全て撤退した。
 金井さんの暮らす福浦など公共交通空白地帯の4地区にとっては、村社会福祉協議会運営の「タクシー」だけが頼みの綱だ。

 国指定の運転者講習を受けてボランティア登録した住民が、有償でマイカーを出し、運転手を買って出る。人繰りが付かないときは、社協の職員がハンドルを握る。
 2005年度に始まった事業は、高齢化に伴って年々需要が増加。15年度は、過去最多1944件の利用があった。
 ボランティアと社協職員の計11人がフル回転で対応しても、このままでは早晩限界を迎える雲行きだ。
 「住民の足は住民が用意するしかない。それが公共交通に見放された村の現実だ。今の取り組みが破綻すれば最後、地域は崩壊する」。社協事務局長若山明生さん(53)の焦りは濃い。

 地方の過疎化、住民の高齢化、そして市町村合併による周縁部の出現。住民主導の域内交通が各地で存在感を増すゆえんだ。
 京都府京丹後市の丹後町でNPO法人が始めた「ささえ合い交通」も、登録した住民ドライバーが地域を支える。
 全国で初めてスマートフォンを使った配車システムを採用。専用アプリで配車を頼むと、即座に最寄りの住民ドライバーへ連絡が入る。仕事の合間に依頼を受けられる仕組みで、負担軽減を実現した。
 自家用車に有料で相乗りする形態だけに、タクシー業界は「白タク行為の合法化につながるのではないか」と警戒を強める。
 だが、NPO法人専務理事の東和彦さん(64)は「白タクとは全く別物」と一蹴する。その口調は「われわれの町を見捨てたのは誰だ」と言いたげだった。
 東さんたちは毎朝、住民ドライバーと顔を合わせて健康状態を確認する。車両には半年点検を義務付けた。タクシー業者並みの手間と費用で安全運行を目指す。
 「地域の足を守るため、住民みんなで汗をかくと決めた」と東さん。独歩を強いられた地域の意気地があった。


2016年11月25日金曜日


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