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<雄勝に生きる>憩いの場で「縁」広がる

穏やかなひとときを過ごすひぐらし会の参加者ら

◎半島の再生記(3)/(下)つながる

<心を通わせ談笑>
 石巻市雄勝町の中心部に、住民らが憩う場がある。
 10月下旬の昼下がり、コミュニティーカフェ「縁」で町内の60〜80代の男女5人が談笑していた。コーヒーやお茶、チョコレートケーキを味わいながら思い出や近況を語り、心を通わせる。
 「昔は木炭車に乗った」「草履で歩き、山を越えて学校へ通った。途中で腹が減って弁当を食べたな」
 5人は、町内の別々の地に暮らす。東日本大震災の仮設住宅にまだ残る人もいれば、災害公営住宅に入居した人もいる。1人暮らし、家族との同居と世帯構成もさまざまだ。
 NPO法人雄勝まちづくり協会が主催する「ひぐらし会」は7月に始まり、ほぼ月1回開かれる。参加費500円。参加者は多いときで10人ほどで、こぢんまりとしていて会話が弾む。
 80代男性は「こうして集まり、話ができるのは楽しい」と喜ぶ。大浜地区にあった自宅は被災し、高台に再建した。同地区は震災前の住民約120人が3分の1の約40人に減った。

<月1回の楽しみ>
 雄勝町全体では人口が約3000減り、約1000になった。カフェは2013年4月にオープン。分散したコミュニティーの再生を願う国内外からの寄付などを基に建てられた。
 「日中に1人でいる人たちと集まってお茶飲みがしたい」。カフェに足を運ぶようになったある住民の願いが、ひぐらし会を開くきっかけの一つとなった。
 ひぐらし会に1回目から参加する中村信子さん(69)は、名振(なぶり)地区の災害公営住宅に単身で暮らす。「月に1回、ひぐらし会の皆さんに会えるのが楽しみ」と言う。
 同地区の自宅は津波で失ったが、中村さんは高台に逃げて助かった。仙台市の長女方や石巻市の仮設住宅で過ごし、昨年11月に帰郷した。「4人の子ども、9人の孫が健康で生きてくれることが望みです」

<出会いを大切に>
 まちづくり協会のメンバーで、カフェとひぐらし会に関わる畑山修賢(しゅうけん)さん(32)も雄勝町で育った。ひぐらし会では、昔の雄勝の話や歴史を知ることができ、刺激を受ける。
 「この会が、参加する人たちの生きがいにつながればいい。参加者の家族にも『カフェにいるから安心だね』と思ってもらえたら、うれしい」
 これまで、そしてこれからの全ての出会いと縁を大切にしていきたい。畑山さんはそんな思いを込め、温かいコーヒーを注ぐ。


2016年11月26日土曜日


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