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<道しるべ探して>三方良しの事業磨こう

御手洗瑞子(みたらい・たまこ)1985年、東京都生まれ。東大卒。米大手経営コンサルティング会社、ブータン政府初代首相フェローを経て2012年、東日本大震災の被災地、気仙沼市で手編みセーター販売「気仙沼ニッティング」を創業。13年から現職。

◎とうほく共創 第6部支え合い/気仙沼ニッティング社長 御手洗瑞子氏に聞く

 東日本大震災からの復興過程で「ソーシャルビジネス(社会的企業)元年」という言葉が生まれた。だが、よそ者の始めたソーシャルビジネスで復興が進んでいるというと、語弊があるように感じる。
 被災地で今も一番頑張っているのは、地元経営者たちではないか。震災後、外部からの支援を受けながら、地元経営者がそれぞれの事業を磨き、地域のために奮闘している価値のある営みだ。
 ソーシャルビジネスは、株主至上主義の経営と一線を画すために生まれた考え方だ。代々続く日本の会社は「お客」「働く人」「地域」の「三方良し」経営を実践してきた。その意味でソーシャルビジネスと三方良しに大差はない。

 「気仙沼ニッティング」を創業して一番うれしかったのは、仕事をしたくてもできずにいた人たちが編み手となり、お客にとって一生ものとなるセーターやカーディガンを作ることで、自尊心を持てるようになったことだ。
 高水準の仕事をし、お客に喜んでもらえれば、働く人の表情や振る舞いが堂々としてくる。人や社会の役に立っているという実感を持てるかどうかは、生きる上でもとても大切だ。
 「気仙沼ニッティングを100年続く会社にする」と言い続けてきた。100年というのは、一人の人間が経営できる期間ではない。人の交代を経てもなお、働く人とお客に価値を生み出し続けられる会社に育てたい。

 「雇用」や「労働力」という言葉は、どこか上の方から人間を見ているように感じられる。人を頭(あたま)数で捉える発想だけでは、人を幸せにすることはできない。
 企業誘致で雇用を生むという考えは、地域に大木を移植することに似ている。一度に大きな雇用をつくれるが、その木が枯れると大量の失業が発生する。重要なのは、地域が自ら新しい事業を生み出す力を持つことだろう。
 「支え合い」は、人間同士なら構わないが、ビジネスの世界では倒れそうな企業を持ちこたえさせようとするイメージを抱かせる。本当は、寿命を迎えている会社をどう終わらせていいか分からず、困っている経営者も多いのではないか。
 「頑張れ」と言うだけでは人を追い詰める。ダメージ少なく会社を終わらせるためのサポートも必要だろう。起業より廃業の方が難しいのだから。
 終わる会社があれば、始まる会社もある。人が持続的に豊かに暮らしていくには、新陳代謝のいい地域をつくることが大切ではないか。日々木が朽ちては生まれる、大きくて豊かな森のように。


2016年11月27日日曜日


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