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<放射光施設>産業界 早期実現を熱望

次世代放射光施設の利活用などを議論したシンポジウム=東京の東大本郷キャンパス

 東北の産学官が誘致を進める次世代型の放射光施設について、国内の産業界が早期建設を熱望している。海外企業との開発競争にしのぎを削る製造業を中心に、新製品や新素材の開発に向けた国内の新たな技術研究拠点として期待は大きい。大学の研究者らも放射光施設の早期実現と「産学協創」による運営体制を模索する。(報道部・片桐大介)
 「産業界と新しい価値創造を目指す東北の放射光施設計画は、極めて正しい方向だ。力強く応援する」
 東大の本郷キャンパス(東京)で11、12の両日あったシンポジウム。五神真・東大総長は、学者や企業の開発担当者ら約150人を前に建設推進のお墨付きを与えた。
 シンポは、東北が誘致を目指す放射光施設による産業利用の可能性を探るのが目的。会場では東大、東北大をはじめ全国の研究者が放射光施設に設置する計測、実験装置を約30件提案。コンピューターの記録媒体、リチウムイオン電池、農畜産物などの性能や品質向上に有用とアピールした。
 シンポで外部委員を務めた製薬会社帝人ファーマ(東京)の上村みどり上席研究員は「新施設の整備は急務だ」と訴えた。
 現在、新薬の構造を解析するため、世界最大の放射光施設「スプリング8」(兵庫県佐用町)を利用するが、同施設には学術と産業の利用者が殺到。海外に試料を送って解析せざるを得ないこともあるという。
 上村氏は「海外では秘密が漏れる恐れもある。安心して開発できる国内の体制が必要」と強調した。
 ある素材メーカーの研究担当者は「今まで挑戦できなかった新素材開発につながる。新施設ができればぜひ使いたい」と期待する。
 東北の国立7大学で組織する東北放射光施設推進会議は、施設利用を望む企業に放射光科学の専門家を紹介してペアを組む仕組みを提示。効率的に成果を生み出す支援体制を整える。
 スプリング8を活用して低燃費タイヤを開発した住友ゴム(神戸市)の中瀬古広三郎常務執行役員は「放射光施設は産業応用の裾野が広いが、有用性に気付かない企業は少なくない。成果を広めることも大切だ」と指摘する。
 次世代放射光施設を巡っては、文部科学省の小委員会が新施設建設の検討を今月上旬に開始。全国に先駆けて誘致を進める東北の関係者から意見を聞く見通し。東北経済連合会は約300億円とされる建設費の一部を民間で賄う財団の設立を進めている。

[放射光施設]電子を光に等しい速度まで加速させ、磁場の力で電子を曲げた際に発生する放射光を利用して物質の構造を分析する装置。原子レベルで物質を見る巨大な顕微鏡とも言われる。東北大などは、炭素や窒素など軽い元素の解析に有用で、紫外線より波長が短い「軟エックス線」に適した次世代施設の整備を提唱している。


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2016年11月28日月曜日


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