宮城のニュース

<楽天の挑戦>3D映像で球筋予習

ゴーグル型のディスプレーを装着し、タイミングを計る嶋(球団提供)
満塁本塁打を放つ中川。VRを使った予習が生きた

 IT技術の発達により、収集・分析が可能になった膨大な電子情報「ビッグデータ」。ビジネスに生かす動きが広まる中、その波はプロ野球の世界にも押し寄せている。親会社がIT企業の東北楽天は他球団に先駆けて、革新的な取り組みを始めた。熱を帯びるグラウンドの外の戦いに迫る。(佐藤理史)

◎生かせビッグデータ(上)VR打撃練習

<端末使い「対戦」>
 9月4日のソフトバンク戦(コボスタ宮城)、一回2死満塁の好機。打席に入った東北楽天の中川大志内野手に、自信はあった。2軍戦を含めて初対戦となった山田大樹投手から、狙い澄ました一発をバックスクリーンに放った。
 初顔合わせにもかかわらず、どんな球を投げてくるか、おおよそ分かっていた。試合前、仮想現実(バーチャルリアリティー、VR)の練習端末を使い、「対戦」を重ねていた。
 変化球の速さ、曲がり幅は頭の中にあった。「追い込まれても対応できそうだ。しっかり直球にタイミングを合わせよう」。狙い通りの直球を振り抜き、自身初のグランドスラムで、チームを勝利に導いた。
 中川が使った練習端末は「VRトレーニングシステム」。球団が昨年からNTTデータ(東京)と共同開発を進めている。
 仕組みはこうだ。ゴーグル型のディスプレーを頭部に装着すると、あたかも打席に立ったかのような3D映像が目の前に広がり、対戦する投手が実戦同様に投げ込んでくる。
 球団は今季から試験的に運用。一部の選手が試合前に使い、対戦投手の投球動作にタイミングを合わせたり、球の軌道を確認したりした。
 ほぼ毎試合前に使ったという銀次内野手は「1打席目が2打席目になる感覚」と効果を口にする。来季は毎日の練習メニューに組み込むなどし、本格的に導入する。

<独自の技術開発>
 VRでの練習を可能にするのは、ビッグデータだ。球団は今季から、コボスタ宮城で対戦投手の映像や、球速、軌道など投球データを収集。これらを合成し、忠実に再現する独自の技術を開発している。
 実際の見え方との違いなどを選手に聞き取り、改良を重ねた。球団は「プロ野球で使える水準に高めたのは世界で初めて」と胸を張る。米大リーグ球団への売り込みも視野に入れる。
 将来はVR練習端末を増やし、2軍の選手も使えるようにする。普段から1軍主戦級の制球の良さや変化球の切れを体感し、1軍に上がった時の戸惑いを減らし、苦手の球種の対策を準備させる狙いだ。
 ゲーム分野でもVRが一般に普及し、2016年は「VR元年」とも呼ばれる。選手1人に1台が配備され、好きな時間と場所を使い、ライバルとの対戦に没頭する。そんな日が来るのも遠くないだろう。


2016年11月29日火曜日


先頭に戻る