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<楽天の挑戦>自動追尾 投球丸裸に

バックネット裏から投球と打球のビッグデータを集めるトラックマン(右端)
後半戦、先発陣に定着した安楽。トラックマンも成長を捉えていた=10月1日、コボスタ宮城

 IT技術の発達により、収集・分析が可能になった膨大な電子情報「ビッグデータ」。ビジネスに生かす動きが広まる中、その波はプロ野球の世界にも押し寄せている。親会社がIT企業の東北楽天は他球団に先駆けて、革新的な取り組みを始めた。熱を帯びるグラウンドの外の戦いに迫る。(佐藤理史)

◎生かせビッグデータ(中)弾道測定器

<投手力を数値化>
 東北楽天で今季、安楽智大投手の台頭は大きな収穫となった。2015年ドラフト1位のエース候補。前半戦は勝ち星を挙げられず2軍降格も経験したが、後半戦は先発枠に定着して3勝を挙げた。
 高卒2年目右腕に何が起きたのか。「リリースポイントのばらつきが減った。(打者が打ちにくくなる)球が上方向へ浮き上がる数値はどんどん大きくなった」。これは監督やコーチの言葉ではない。機械の目が、つぶさにフォームや球質の成長を捉えていた。
 冷静に選手を観察するのは、デンマーク製の弾道測定器「トラックマン」。約1メートル角の薄型テレビのような黒い機器は、コボスタ宮城(仙台市)のバックネット裏3階中央部にある。ボールに電波を当て、戻ってきた電波の周波数のずれ(ドップラー効果)を利用して弾道を追尾計測する。
 トラックマンは軌道上の全ての地点で球速を捉え、リリースポイント、ボールの回転数と回転軸の傾き、変化球の曲がり幅などを高い精度で自動的に数値化する。投球だけではなく、打球の速度や角度も分かる。
 東北楽天チーム戦略室の上田顕室長は「これまでは投手の能力を説明する時、球の『伸び』『切れ』といった主観的な表現を使ってきた。トラックマンの登場で、客観的な数字で議論できるようになり、説得力が増した」と利点を語る。

<活用法は無限大>
 タブレット端末に日々送られてくるデータに、選手も興味津々。抑えを務める松井裕樹投手は「試合結果やマウンドで感じたことと照らし合わせて、自分の状態を確認している」と注目する。
 トラックマンは、迎撃用ミサイル「パトリオット」の開発過程で生まれた技術を転用。プロゴルフ界で注目され、米大リーグでは全30球団が2014年までに導入した。
 国内では東北楽天が14年7月、アジアの球界に先駆けて採用すると、今季までロッテを除くパ・リーグ4球団とDeNAが後を追った。来季も数球団が取り入れる見通しで、日本球界で急速に広まりを見せる。
 データの活用法は無限の可能性を秘める。リリースポイントの変化で投手の異常を検知して故障を予防できるし、疲労度を算出し、投手交代のタイミングを計るなど作戦にも生かせる。機器が小型化し持ち運びできるようになれば、アマチュア選手の能力調査に使うことも可能だ。
 各球団がビッグデータを収集するのは当たり前の時代に突入した。どう分析し、活用するかが、チームの競争力を決める重要な要素になりつつある。


2016年11月30日水曜日


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