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<楽天の挑戦>科学的野球 分析と浸透が鍵

上田顕(うえだ・あきら)1984年横浜市生まれ。東北大理学部卒。大学時代はコボスタ宮城でグラウンド整備のアルバイトを経験。大手銀行、コンサルティング会社の勤務を経て、2012年楽天野球団入り。設立からチーム戦略室に加わり、15年から現職。

 東北楽天は他球団に先駆けて弾道測定器「トラックマン」を導入するなど、ビッグデータの利活用に積極的に取り組む。推進役を担う上田顕チーム戦略室長(32)にこれまでの歩みと今後に向けた展望を聞いた。

◎生かせビッグデータ(下)上田顕チーム戦略室長に聞く

<体制が今季整う>
 −2012年11月にチーム戦略室が発足し、5年目を迎えた。
 「最初、分析に携わったのは3、4人で、データを取るのに精いっぱいだった。14年途中、日本球界でおそらく初めてのR&D(研究開発)部隊を設け、新たな機器の導入を進めるようになった。今季からスコアラーも加わり、計13人に拡大。思い通りにできる体制がほぼ整った」

 −最新のテクノロジー機器を次々と導入している。
 「チーム戦略室は中長期的にチームを強くするのが最大の役目。それに資するものは積極的に取り入れる。三木谷オーナーや立花社長は客観的なデータに基づいて科学的に野球をやりたいという考えで、先端的な技術導入に理解がある」

 −ビッグデータの活用で、他球団との競争はどうなるか。
 「トラックマンを先行導入した分、データの蓄積があるのは強みの一つ。しかし、他球団も同様のデータを持つようになる今後が勝負だ。レベルの高い分析をし、選手やコーチにいかに浸透させ、実戦で活用できるかがより重要になる」

 −選手やコーチにデータ活用を浸透させる工夫は。
 「コミュニケーション方法は気を配っている。戦略室は毎月のリポートを出すだけではなく、コーチ会議やスカウト会議にも参加する。塩川達也さんら元選手をメンバーに加え、選手との橋渡し役を担ってもらいデータを伝える。球界全体は新奇なものへの抵抗が強く、古い体質が残るが、東北楽天では着実に理解が広がっている」

<選手にメリット>
 −選手の反応はどうか。
 「実績を残してきた選手ほど、新たな機器やデータに興味を持ち、積極的に日々の勉強に使ってくれる。客観的なデータに基づく評価なら、コーチとの人間関係などで不当な評価を受けることはない。選手にとってのメリットも大きい」

 −今後取り組む課題は。
 「打球の速度や角度といったデータの活用は、なお未開拓の領域が大きい。米大リーグでは打者の打球方向の傾向を踏まえ、大胆な内野の守備シフトを敷くことがある。東北楽天でもできないか、今季から導入に向けた準備を少しずつ進めている」

 −ビッグデータの活用は、野球の競技自体にも影響を与える。
 「分からなかったことが分かるようになれば、野球の常識が変わる。ストライク、ボールの自動判定ができるので将来、審判の一部機能は消えるかもしれない。コーチは求められる技術水準が上がる。『肘が下がっている』と指摘するだけでは足りず、対処法や練習法を提示できないといけなくなるだろう」


2016年12月01日木曜日


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