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<山形知事選>尾を引いた参院選遺恨

吉村知事の県政報告会であいさつする自民党元参院議員の岸氏=11月21日夜、山形市の山形国際交流プラザ

 任期満了に伴う山形県知事選(来年1月5日告示、22日投開票)で、自民党山形県連は独自候補の擁立を断念した。立候補を表明している現職吉村美栄子氏(65)の無投票3選が現実味を増す。県内三つの衆院議席を独占し、県議会では最大会派を擁する「自民王国」の山形県で、不戦敗を選ばざるを得なかった内幕を探る。(山形総局・宮崎伸一)

◎自民候補擁立断念(下)重鎮の意向

<党本部へ橋渡し>
 11月21日夜、山形市であった吉村美栄子知事(65)の県政報告会。3選へ向けた総決起大会の様相を帯びた会場で、ひときわ注目を集めたのは自民党元参院議員岸宏一氏の発言だった。
 「吉村知事は自民党の二階俊博幹事長、菅義偉官房長官とのラインも持っている」。岸氏はあいさつでうなずくように語った。
 終了後、取り囲んだ報道陣に岸氏が語ったのは「知事選は政党論理ではなく、地域のために戦うものだ」という持論。この言葉は候補擁立を目指す自民党へのけん制でもあった。
 今夏まで3期18年間、国会で活躍した岸氏は、吉村氏が政界入りした知事初当選の選挙時から支え、党県連執行部とは異なる路線を歩んできた。
 「自民党とは距離がある」と言われてきた吉村氏は今年10月、二階幹事長と菅官房長官に会い、知事選(来年1月5日告示、22日投開票)の激励を受けた。県連執行部の頭越しに行われた、この面会。山形県政界には衝撃が走った。
 複数の関係者は「党本部と吉村氏の橋渡しをしたのは岸氏だ」と証言する。
 岸氏が元々吉村氏を支援していたとはいえ、知事選にここまで介入するのは初めて。県議の一人は「今夏の参院選で生じた遺恨が今もあるのだろう」と、理由を推測する。

<厭戦ムード漂う>
 自民党県連で参院選山形選挙区(改選数1)の陣頭指揮を執ったのは、遠藤利明県連会長(衆院山形1区)が率いる現執行部。「岸氏が正式な引退表明をする前に、執行部が後任候補の公募を決めたことが、岸氏と遠藤会長の間に亀裂を生じさせた」と、先の県議は明かす。
 参院選公示前の6月上旬、山形を訪れ、一連の経緯を知った安倍晋三首相は、遠藤会長に岸氏への謝罪を勧めたという。実際、数日後に遠藤会長は岸氏に会って協力を求め、表面上は和解に至った。
 参院選で、岸氏本人は自民党候補の応援マイクを握りはしたが、事務所関係者が「岸は自民党候補を応援するとは言っていない」と発言し、波紋を広げる一幕もあった。
 その参院選で自民党候補は12万票の大差で野党統一候補に大敗した。知事選で自民党が独自候補を立てれば、参院選と知事選は同様の構図となる。それだけに自民党側には厭戦(えんせん)ムードが漂った。
 「参院選が終わった時点で知事選に候補を立てられないのはほぼ決まったようなものだった」。ある自民党県議は、不戦敗を早い段階で予想した。

<「見送りを進言」>
 山形市内で26日にあった吉村氏の事務所開き。姿を見せた土田正剛東根市長は、かつて地元で「ミスター自民党」と異名を取った実力者だ。県連幹事長を務め、1993年の知事選に立候補したこともある土田氏も、今回の擁立断念劇で一定の役割を果たした。
 参院選で土田氏は県市長会会長として「市長有志の会」を立ち上げ自民党候補を支援したが、知事選では前回同様、吉村氏を支援する態度を明確にしている。
 党関係者の間では「吉村県政を評価する土田氏が、独自候補擁立を見送るよう遠藤会長に進言した」という話が流れ、本人も否定はしない。
 県連執行部内にあった亀裂に、吉村氏支援で動く党の重鎮たち。その存在もまた、候補者擁立にブレーキをかけ、「苦渋の決断」(遠藤会長)を迫る一因となった。


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2016年12月01日木曜日


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