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<福島沖地震>車渋滞 訓練重ねルール共有を

宇佐美誠史(うさみ・せいじ)大阪府寝屋川市生まれ。福井大大学院工学研究科博士後期課程修了。岩手県立大助手などを経て、2016年4月から現職。釜石市防災会議専門委員アドバイザーを務める。専門は交通工学、土木計画学。42歳。

 福島県沖を震源とした11月22日の地震では、東日本大震災で多くの犠牲者を出し課題となった自動車での避難による渋滞が再び繰り返された。車避難のリスクを訴える岩手県立大の宇佐美誠史講師(交通工学)に、安易に車に頼る危険性や対策について聞いた。(聞き手は報道部・村上俊)

◎岩手県立大講師 宇佐美誠史氏に聞く

 津波で被災した自治体の多くは、津波避難計画や地域防災計画に徒歩での避難を原則として明示しているが、一般にはほとんど知られていない。今回の地震津波での混乱は、震災の教訓が「わがこと」になっていない現実をあらわにした。
 車での避難は、道路の損傷や渋滞で動けなくなり、津波から逃げ遅れるリスクがある。さらに車中泊が長期に及べば、エコノミークラス症候群(静脈血栓塞栓(そくせん)症)で命を落とす危険性があることは新潟県中越地震や熊本地震でも分かっていることだ。
 高齢者や障害者、乳幼児といった避難に支援が必要な人を助けるために車の利用を限定することが大切だ。
 福島県いわき市の高齢者施設は入所者をマイクロバスや職員の車に分乗させ、避難所に送ったといい、このような利用策が参考になる。
 被災地は復興途上で、防潮堤や避難道路も整備の過程にある。地理的な特徴や世帯構成など地区ごとの状況に応じた個別の避難計画、行動指針を設けるのがいい。作っただけで満足せず、さまざまな時間帯や場所での災害発生を想定した訓練を重ねることが重要だ。
 平地に広がる宮城県山元町、亘理町は現実的な対応として車を使った避難訓練に取り組み、課題を検証している。
 大災害に直面すると、自分だけは大丈夫と思い込む「正常性バイアス」がかかってしまったり、理性を失ってしまったりする。
 避難行動で混乱しないためには、支援が必要な人は誰でどう守るのか、分かりやすいルールを共有し、訓練で実効性を高める。悲劇を繰り返さないためにも事前の備えが欠かせない。


2016年12月01日木曜日


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