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<被災地民生委員>被災者支援 業務上乗せ

災害公営住宅で住民らと話をする民生委員の境さん(左)=石巻市(写真は一部加工しています)

 東日本大震災や東京電力福島第1原発事故で被災した自治体では、住民避難や災害公営住宅の整備、防災集団移転などでコミュニティーの再編が進む。民生委員・児童委員は新住民と一から関係を築き、困りごとなどの相談に応じる。被災地で活動する委員の負担は従来より重く、専門家は「被災者支援に携わる関係者との連携を強化し、委員が活動しやすい態勢を行政が築くべきだ」と指摘する。

<「今までと違う」>
 「人間関係を築くのに時間がかかる。『心配だな』と思う入居者のうち面接できたのは半分くらい。歯がゆさがある」
 昨年3月に完成した宮城県気仙沼市の災害公営住宅「南郷住宅」(165戸)の自治会長で、民生委員を務める藤原武寛さん(51)は打ち明ける。
 入居者の高齢化率は5割に上る。今年5月には体が不自由だった独居の男性が部屋で倒れているのを発見。救急車を呼んだが、数日後に亡くなった。「あと数時間見つけるのが早ければ」と悔やむ。
 震災で財産や親戚とのつながりを失った人も多く、民生委員に寄せられる悩みは重い。
 宮城県石巻市で30年以上民生委員を務め、現在、災害公営住宅2棟を担当する境政幸さん(69)は「委員として求められることが今までと違う」と実感する。
 プレハブ仮設住宅と異なり、公営住宅では家賃や共益費の負担が発生する。経済的な悩みが寄せられることも多く、被災者の自立を支援する役割も加わった。
 「今までは地域を自転車で巡回するだけで、洗濯物や窓のカーテンの様子から生活を把握できた。集合住宅で1軒ずつ状況を把握するのは並大抵のことではない」と境さん。個人情報保護の壁で、行政から得られる入居者の情報は限られる。「被災は非常事態。行政はもっと柔軟に対応してほしい」と訴える。

<最も頼れる存在>
 被災地では社会福祉協議会の相談員による巡回など、住民の見守りの仕組みが複数あるが、同じ地域に暮らす民生委員は最も頼りにされる存在だ。
 気仙沼市は災害公営住宅に高齢者相談室を併設し、生活援助員が平日常駐する。民生委員を支える役割も担うが、同市民生委員・児童委員協議会の渡辺耕良会長(72)は「援助員の見守りは平日の日中だけ。夜間や休日は民生委員を頼らざるを得ない」と話し、委員の負担増を懸念する。
 被災地の地域福祉に詳しい東北学院大地域共生推進機構の本間照雄特任教授(福祉社会学)は「被災地の民生委員は通常業務に被災者支援が上乗せされている状態。関係機関の相談員や保健師らと連携し、役割分担できる枠組みを行政が整備すべきだ」と指摘する。


2016年12月02日金曜日


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