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<陸前高田市>震災全壊の庁舎 再建どこへ

 東日本大震災で全壊した岩手県陸前高田市庁舎の再建を巡り、市は11月下旬、複数の候補地を公表した。市内には浸水区域をかさ上げする中心市街地近くを要望する動きがある一方、災害対応拠点を失って行政機能がまひした経験から、高台を望む声もある。庁舎の姿はどうあるべきか。安全性、利便性、財政負担など議論の焦点は多面的だ。(大船渡支局・坂井直人)
 各候補地の比較は表の通り。新庁舎の規模は旧庁舎を目安に、駐車場の確保などから敷地面積は倍の1万2000平方メートル、延べ床面積はやや増の約6000平方メートルを基本とした。
 公共施設の再建に当たり市は(1)災害時の拠点となる消防や警察(2)避難所の体育館(3)岩手県立病院と学校−は、それぞれ高台に整備。図書館や文化施設などはかさ上げした中心市街地に配置する。現在の仮設市庁舎は(1)と同じエリアの高台にある。
 陸前高田商工会は11月10日、現高田小用地など、中心市街地近くへの再建を市に要望した。
 市街地には大型商業施設内も含め100店舗程度が出店する予定。伊東孝会長(63)は「役所の用事と買い物を合わせてでき、利便性がいい。人が行き交えば、街が活気づくのではないか」と期待する。
 高田小は震災で校舎1階が浸水した。戸羽太市長は「防潮堤やかさ上げで、今のシミュレーションでは全ての候補地に(震災クラスの)津波は入ってこない」と安全性を強調。校舎1階部分は支柱のみの構造とする強化策も示した。
 ただ、浸水した事実に不安を拭えない人もいる。市街地にあった一部4階建ての旧庁舎は、3階まで丸ごと浸水。屋上に避難した職員は紙一重で助かったが、指定避難所だった周辺の市民会館などで職員111人が犠牲になった。行政機能は一時、停止した。
 同市の主婦戸羽初枝さん(54)は、職員だった長男と長女を亡くした。「より大きな津波が来ない保証はない。壊滅的と言われるほどの被害があった陸前高田は、津波に対して安全すぎるくらいであってほしい」と浸水区域外を求める。
 人口減少社会を踏まえた施設規模、市民ニーズに応える庁舎の在り方などを問う声もある。
 市議会は8日の復興対策特別委員会などで議論する。市は来年3月の候補地決定を目指している。

[東日本大震災の津波で被災した本庁舎再建の動き]岩手県大槌町は、町中心部にあり1階部分が浸水した旧大槌小を改修した。JR女川駅周辺に公共、商業施設を集約する宮城県女川町は浸水区域境付近を海抜20メートルに造成して建てる。同県南三陸町は海抜61メートルの高台に建設中で、かさ上げした市街地から離れる。宮古市はJR宮古駅南側の浸水区域外を1.5メートルかさ上げする。釜石市も浸水区域外の市有地を軸に検討する。


2016年12月05日月曜日


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