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仮設に無償で野菜届ける 74歳6年目の冬

収穫した野菜を軽トラックに積み込む菅原さん=栗原市高清水

 東日本大震災の仮設住宅に無償で野菜を届け続けている宮城県栗原市高清水の農業菅原正俊さん(74)が、活動を始めてから6度目の冬を迎えた。自宅再建などに伴い転居者が増える中、一度は支援をやめることを考えたが、生活再建からほど遠い人たちの現状を前に継続を決めた。「前に進みたくても進めない人が少なくない。自分の体が動かなくなるか、みなさんがしっかりと立ち上がれるようになるまで続けたい」と話す。
 菅原さんは、震災後の2011年6月ごろから野菜の無償提供を始めた。栽培する葉物や根菜を軽トラックに積み、週1〜3日、石巻市や気仙沼市、宮城県亘理町など沿岸部を中心に回る。訪問先は延べ940カ所を超えた。
 活動中止を検討したのは、震災から丸5年の16年3月。「世間に一つの区切りとの見方が広がり、自立の妨げになるかもしれないとも思った」と菅原さんは振り返る。
 だが、野菜を受け取る人の中には将来が見えない住民が少なくなかった。ある高齢者は「この年では借金もできない」と打ち明けた。別の人は「次の行き場を考えられない」と語った。支援継続の必要性を痛感した。
 今年の冬は大根やキャベツ、白菜などを車に満載し、海辺に向かう。かさむガソリン代は、庭木の剪定(せんてい)や屋根の塗装などで稼いだアルバイト代を充てている。野菜の価格は高騰中だ。行く先々で掛けられる「ありがとう」「助かります」の声が力になっている。
 収穫を手伝う妻さだ子さん(71)は「周囲からは夫婦そろって変わり者扱いされてるかも」と笑いつつ、「誰かが支援をやめてしまったら風化も進んでしまう」と意義を強調する。
 菅原さんは「自己満足かもしれないが、何もしないでもどかしいよりはいい。今後も野菜と一緒に『外の人もあの震災を忘れていない』という思いを届けていきたい」と話す。


2016年12月07日水曜日


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