広域のニュース

<TPP成立>農家ら「振り回された」

 環太平洋連携協定(TPP)の承認案と関連法案が参院本会議で可決、成立した9日、東北の生産者らはシナリオが大幅に狂った協定の先行きに不安を募らせた。トランプ次期米大統領のTPP脱退表明で協定発効は困難な状況にあり、生産現場には「政治に振り回された」との不満が漂う。
 ブランド牛「前沢牛」の生産が盛んな岩手ふるさと農協(岩手県奥州市)肉牛部会の藤田栄部会長は「発効しても、発効できなくても、生産現場は混乱する。先を見通すことがさらに難しくなった」と懸念を深める。
 「原発事故の風評被害というハンディキャップを抱える中で、TPPに振り回された」。全農福島県本部の渡部俊男米穀部長はこう振り返り、「国会承認はパフォーマンスでしかない。現場にはしらけたムードが漂っている」と語った。
 交渉過程や生産現場への影響は不透明なまま、TPPの国内手続きは完了する。宮城県白石市で牛約70頭を飼育する佐藤工季さん(36)は「影響が本当にあるのか、ないのか分からない。農業の環境が大変になるのは間違いない。やれることをしっかりやりたい」と話す。
 山形県上山市の果樹園経営吉田晃兵衛さん(62)は「補助金頼みの国内農業は限界に来ている」と厳しい見方。「TPPのような外圧がないと変われない。多少の痛みを伴っても、自立に向かう契機になるのではないか」との思いを強くする。
 トランプ氏はTPPに代わって2国間の自由貿易協定(FTA)などの交渉を進める考えを示しており、国が貿易政策の見直しを迫られるのは必至だ。
 秋田県大潟村でコメを生産する専業農家の今野茂樹さん(62)は「2国間の貿易交渉に重点が移り、日本側がより譲歩を迫られるのではないかとの懸念がある」と気をもむ。
 生産、加工、輸出団体などでつくる青森県りんご対策協議会の加川雅人会長は「TPPが右往左往しても、海外に認知されている県産リンゴへの影響はほぼない。生産者らも動じることなく、粛々と生産している」と冷静に受け止めた。


関連ページ: 広域 経済

2016年12月10日土曜日


先頭に戻る