福島のニュース

<帰還へ浪江町模索>町の現状 動画で配信

仮設商業施設で店舗関係者(中央)にインタビューする山田さん(左)と撮影する宍戸さん=11月17日、福島県浪江町

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難の長期化で、帰還意欲の低下が大きな課題となっている。福島県内の被災自治体は住民を故郷につなぎ留めようと模索する。すぐには無理でもいつか戻ってきてほしい−。県内外に約2万人が避難する福島県浪江町の取り組みを通じ、現状とこれからを探った。(福島総局・高橋一樹)

◎つなげ、ふるさと(中)なみえチャンネル

<毎週休まず更新>
 東京電力福島第1原発事故による全町避難が、一部を除き来春解除される福島県浪江町。国道6号沿いの役場敷地内にオープンした仮設商業施設「まち・なみ・まるしぇ」で11月中旬、「なみえチャンネル」の取材が行われた。
 「店名の由来は」「どんな店にしたいですか」。店主らに質問を投げ掛け、やりとりの様子をスマートフォンで動画撮影する。
 なみえチャンネルは5〜15分の手作り動画。町復興推進課の宍戸仁美主査(37)と、IT企業出身の山田直行副主査(37)の2人が中心になって制作する。
 希望した7000世帯に町が配ったタブレット端末で閲覧できる。「遠方に避難している町民の代わりに町の様子を見に行き、現状を伝えるのが役割」と山田さんは言う。
 今年1月に配信を始め、町民からの投稿写真や成人式の映像などを流した。毎週金曜にほぼ休まず更新。不定期の特集を含め、45本以上の番組を作った。
 いわき市に避難する石田芳枝さん(66)は「町の様子が分かるし、知っている人が結構出ている」と配信を心待ちにする。

<取材は試行錯誤>
 認知度はまだまだ低い。動画サイトを通して町民以外も閲覧できるが、再生回数は平均で300回ほど。いかにアクセスしてもらうかが課題だ。
 担当する2人は「復興への動きをどう紹介していくかが重要」と考える。
 「町がどう進もうとしているのかが分からない」。来春の避難指示解除が近づく中、こんな声を耳にするようになった。
 「町は復興計画や報告書など山のような資料を町民向けに出しているが、読んでもらうのは難しい」と山田さん。少しでも復興の現場を見てほしい。2人は生活用水の安全性を伝えるため、水道施設を取材するなど試行錯誤を重ねる。

<店員の姿を紹介>
 仮設商業施設の特集では、入居する全10店舗の店員を紹介。「復興に前向きな町民の顔を多く映そう」とスマホを向けた。
 店舗の一つ、町商工会の「ミッセなみえ」は生花や時計、呉服、焼き物などを並べている。原発事故前、町内で営業していた事業者が扱っていた商品だ。
 「このスペースをきっかけに町内で営業を再開する事業者が一人でも出てほしい」。商工会の担当者は願いを込めて取材に答えた。
 復興庁が9月に行った意向調査で「町に戻らない」と答えた町民は5割強。帰町を迷っている人を含めると、8割が当面、避難生活を続けるとみられる。
 古里への関心をいかに引き留められるか。
 宍戸さんは「町民の知りたいこと全てを探るのは難しいけれど、番組の内容を磨き、新たな視聴者を開拓したい」と話す。


2016年12月16日金曜日


先頭に戻る