宮城のニュース

<手腕点検>強い指導力に反作用も

市政懇談会で市民の質問に答える菅原市長。能弁さも備えている=6日、気仙沼市鹿折小

◎2016宮城の市町村長(21)気仙沼市 菅原茂市長

 気仙沼市の菅原茂市長(58)は東日本大震災の津波で自宅が流され、築46年の老朽化した公舎に妻、母と3人で暮らしている。
 「もう5年たったのだから家を再建したら」。友人が尋ねると、「仮住まいの人がゼロになるまで再建することはない」との答えが返ってきたという。震災から幾多の難局を乗り越えてきた責任感の強さは、周囲の折り紙付きだ。

<着工へ粘り強く>
 水産会社社長、政治家秘書を経て、2010年に初当選。震災を挟んで14年春は無投票で再選した。
 「復興事業を知り尽くしている」(市幹部)と評され、「遅い」と言われた住宅再建も今年11月末で災害公営住宅の74%、防災集団移転団地の98%が完成。基幹産業の水産業再生も進む。印象的だったのが、その水産業界で意見がすれ違ってしまった時の対応だ。
 被災した中小造船会社が朝日町地区に合併・集団移転して造船団地を造る事業で水産加工業界が「粉じん飛散の恐れがある」と市に見直しを求めた。事態が長引く中、菅原市長は専門家や国の担当者も招いて環境対策評価委員会を設けた。
 「丁寧に説明して懸念を払拭(ふっしょく)してもらう」と粘り強く対応し、造船団地は今年10月着工した。同級生でもある熊谷伸一議長(59)は「水産業出身の市長が支援者の反発を恐れず、より良い道を貫いた」と評価する。
 国や県との交渉も真っ向から臨み、「県職員は数年で異動するが私はずっと街と向き合う」と厳しい意見もぶつける。防潮堤事業は少しでも高さを低くする努力を惜しまない。産業界も「安心して復興を任せられる」と信頼が厚い。

<内向きの雰囲気>
 ただ、リーダーシップの強さは反作用も生じる。
 公の席で市職員が説明していると、「そうではなくて…」と市長が割り込んで語り始める場面が多い。職員が畏縮して市長の意向ばかりを気にし、上司に意見しづらくなる内向きの雰囲気が市役所に漂う。
 組織の閉塞感があらわになる出来事もあった。
 震災後に増えた残業代の一部が支払われていないとして15年春、職員2人が市を提訴する事態に発展した。市は今春、12〜14年度の職員延べ751人の未払い残業代約3億6000万円を支払い、決着した。
 「職員一人一人が市民との接点。生き生きと仕事をしていなければ、それは市民にも伝わる」と熊谷議長。地元の商業者も「人の力を借りるのが上手じゃない。職員に任せるところは任せて、総合力を高めてほしい」と注文する。
 経営者向けの経営未来塾をはじめ、若手や女性、高齢者のまちづくり人材を育てる事業に独自色を出す。人口が6万5975と震災前から11%減る中、人づくりを復興に生かそうと努力する。
 そうした人々が協力しあう雰囲気を、街にも市役所内にもつくれるか。菅原市長は「市民のために市役所はレベルアップが必要」と、復興完遂に向けて手綱を緩める気配はない。(気仙沼総局・高橋鉄男)


関連ページ: 宮城 政治・行政

2016年12月18日日曜日


先頭に戻る