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<福島第1>費用負担 国民納得できぬ枠組み

清水修二(しみず・しゅうじ)1948年、東京都生まれ。京大大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。福島大理事・副学長などを歴任し2014年から現職。

◎福島大特任教授 清水修二氏に聞く/原発将来像と共に検討を

 東京電力福島第1原発事故の処理費を巡り、政府は総額が従来の11兆円から21兆5000億円に膨らむとの試算を明らかにした。賠償費などを確保するため新たに国民負担を求める方針だ。原子力問題や原発事故被災地の状況に詳しい福島大の清水修二特任教授(財政学)に、国がまとめた費用負担の枠組みの問題点を聞いた。(聞き手は東京支社・小沢邦嘉)

 −事故処理の費用が従来の想定から倍増した。

<試算が非現実的>
 「これまでの試算が非現実的だった。廃炉費は2兆円から8兆円に増えたが、溶融した核燃料取り出しの見通しなどは不透明で、さらに増える可能性が高い」

 −政府は国民に負担増を求める方針だ。
 「事故の原因者が費用を負担するのが原則だが、福島原発事故の処理費は膨大だ。消極的であっても国民が原発を受け入れてきた歴史的経緯を踏まえると、負担が『不当』とまでは言えないのではないか。ただ、その場合は国民が納得できるルールや論理の組み立てが大前提となる」

 −負担の枠組みの問題点は。
 「廃炉費の一部が国民負担となるなら分かるが、賠償費は疑問。文字通り加害者の被害者に対する『償い』であり、東電が全面的に責任を負うべきだ。消費者や国民に負担を求めれば、賠償を受ける被災者と、負担する国民との間に対立関係が生じる恐れもある」

 −国は賠償費の一部負担を東電以外の電力会社にも求める理由を「過去に原発で発電した電気料は、事故の賠償の備えが不十分だったため」と説明している。
 「開き直って『過去のつけを払え』と言っているようなもの。そのように説明するのであれば、『原発の電気は安い』という主張が間違っていたことを認め、謝罪した上で消費者に負担をお願いすべきだ」

 −新たな費用回収の方策として、電気料金に含まれる送電網使用料(託送料)への上乗せが予定される。
 「託送料は税金のように国会でチェックできず、透明性や国民の納得という点で問題がある」

 −税金で原発事故を処理する手法は妥当なのか。

<既存税を財源に>
 「電源開発促進税という税制が既にあり、電気料金に上乗せする形で年間約3000億円が集められている。まずはこの活用策を国会が議論すべきだ。現状では原発立地地域への補助金などに充てられているが、廃炉にも使えるよう見直せば相当な財源になる」

 −費用負担に国民の理解を得る方策はあるか。
 「本来は原発を今後どうするかという将来ビジョンと一緒に負担の在り方を検討する必要がある。脱原発を計画的に進めるなら、負担を受け入れるという考えもあり得ると思う。原発を延命するとともに、国民負担も増やすような現状のやり方では、理解は得られないだろう」


2016年12月18日日曜日


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