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<東北の本棚>「公民連携」の軌跡追う

◎町の未来をこの手でつくる 猪谷千香 著

 盛岡市のベッドタウン、岩手県紫波町。農業を主産業とする人口約3万4000人の町に、年間90万人以上が訪れるにぎわい拠点が生まれた。JR東北線紫波中央駅前で進められた「オガールプロジェクト」。補助金に頼らない「公民連携」による開発は、県内2位の地価上昇率をもたらしたという。本書はプロジェクトの約10年間の軌跡を追ったノンフィクションだ。
 開発されたのは、バブル崩壊で長年塩漬けとなっていた町有地10.7ヘクタール。ここに、町の図書館や産直施設を備える「オガールプラザ」、バレーボールアリーナ、ホテルが入る「オガールベース」、芝生が広がる「オガール広場」などが誕生した。中でも図書館は蔵書数7万5000冊と規模こそ小さいが、農業関連資料を集めた地元農家の支援機能を持つなど、年間20万人超が利用する全国でも注目の施設となった。
 開発手法として、事業の企画段階から民間事業者が参加する「事業促進パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP)」を採用した。目指したのは「稼ぐインフラ」だった。
 資金調達のために特別目的会社(SPC)を設立して債権を証券化。投資家が納得するよう、採算性を熟慮して計画を立てた。建設費を極力抑え、テナントの経営見通しまで厳しいチェックを重ねた。理念と情熱を持った民間・行政のキーパーソンの存在も重要だった。
 「オガール」とは「成長」を意味する紫波の方言「おがる」とフランス語の「駅」を意味する「Gare(ガール)」を組み合わせた造語。全国の地方自治体で破綻が相次ぐ行政主導、補助金依存のまちづくりと決別し、自力で未来を切り開こうとする住民らの姿が印象的だ。
 著者は1971年東京生まれ。産経新聞記者を経て、動画投稿サイト「ニコニコ動画」を運営するドワンゴ(東京)でニュースを担当。2013年4月から米ニュースサイト「ハフィントンポスト」日本版記者を務める。
 幻冬舎03(5411)6211=1512円。


2016年12月18日日曜日


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